『作文』や『小論文』は、正直今や課されない学校の方が珍しいと思う。
それくらいメジャーで、同時に難しいモノであり、どう対策するかは、僕もちょっと前に記事を書いた。
jukukoshinohibi.hatenadiary.com
そんな折、作文の得点が上位層の生徒と、下位層の生徒を、色々と徹底的に比較するという、茨城大学のユニークな調査を発見。
http://ir.lib.ibaraki.ac.jp/bitstream/10109/13736/1/20180058.pdf
読んでみると、作文の点が高いグループとそうじゃないグループで結構面白い傾向や差異が出ていたので、今日はそれをシェアしてみる。
調査の内容とは?
今回の調査をざっくり言えば、
① 3つの中学校で課題作文を実施。(テーマはコンクールに毎年出しているお題、『私たちの平和』)
② それぞれ成績上位層と下位層に分けて、接続語の使用数や、一文当たりの平均文字数などを分析。
という具合。成績上位層と下位層で、学校によっては得点が倍近く違うので、何かしらの秘密が隠されているに違いなさげ。
では、どういう差異があったのか?以下、気になった点をピックアップ。
国語力が高い生徒と低い生徒の違いとは?
もったいぶっても仕方ないので、一気に列挙。
上位層ほど、一文当たりの長さが短い!
上位層ほど、『漢語』の使用率が高い!
上位層ほど、『接続語』の使用率が高い!
(↑特に、『しかし(≒逆接)』の登場率が、成績上位グループほど顕著に高い!)
という具合。うーむ、大抵は予想通りだが、『しかし』を使いこなせると『国語力』が高いという説は盲点だった。
確かに、ある程度の論理的思考力や文章構成力が無いと、とても『しかし』なんて使いこなせないと思う。(でないと文章がぐちゃぐちゃになる)
また学校によっては、『しかし』と呼応するように、『もちろん』という接続語が顕著に登場しているのもあった。
多分学校の指導だろうが、これは『もちろん・・・しかし』という譲歩表現の一種。説得力のある文章を書くコツでもある。
さてさて。ここまでを乱暴にまとめると、『国語力』が高い生徒とは、
短い文で言いたいことを端的に表し、接続語を使いこなしながら論を進められる!
と言ったところだろうか。文を短くするために漢語の使用率が高まるのは、ある種当然なので、この辺は納得。
―ちなみに、なぜ成績下位層は上位層と逆の傾向が出てしまうのかというと、
書き言葉と話し言葉の区別がついていないため、和語が増えてしまう!
(↑実際、『でも』という話し言葉の登場頻度は、下位層だと高い)
言いたいことをまとめきらず行き当たりばったりで進めるため、一文が長くなる!
作文を人と話すときみたいに書いてしまうため、多様な接続語を使わない!(そもそも知らない?)
みたいなちょっと手厳しい評価が出ていた。
文章を書いたり読んだりすることが会話の延長線上にあると捉える限り、読解力は伸びない!・・みたいな考察があり、これは納得。
この辺は能力やセンスうんぬんではなく、単に経験不足の意味合いが強いと思うので、如何にコチラが声掛けや教材準備ができるかが要ではなかろうか。
さて。この論文では、最後に『では、両グループとも、あらかじめの指導の上、自分が書いた作文を推敲させたらどうなるか?』も調べられていた。
結果は、
一文の長さが双方短くなり、さらに両グループとも漢語の使用率がアップ!
というものであった。これは納得だが、指導の際にヒントになりそうな結果だ。
例えば、最初から完璧な構成を目指しつつ書くのではなく、フローチャートか何かで手っ取り早く構成を作り、とりあえず書いてから推敲する!
なんて作戦も使えるかもしれない。そもそも書き終わらないと本末転倒だし、書いてさえしまえば、精神的余裕もできる。
皆様の指導のヒントになっていればありがたし。
―ということで、今回の論文を読み、今一度『漢語』や『接続語』の知識の大切さを思い知ることができたという話。
ただそれをカリカリ書いてやると効率が悪すぎるので、まずは『読む』学習に取り組ませたい。
となれば、中学生や小学生にも読みやすい語彙の、内容も優れた説明文を買って、校舎においとこうかな。心当たりはほぼ無いけど・・・。
まずは『伝える力』で様子見をしよう。そうしよう。
それでは小ネタの割にちょっと文字数が膨らんだが、今日はこの辺で。