塾講師として胃がとてつもなく痛い時期になった。受験が近づき、或いは結果が出て、種々雑多・十人十色の悩みを日々シャワーのように浴びているためだ。
当然だが、『夢を諦めるな!』みたいなただ熱いだけのメッセージも、『腑抜けるな!』という言葉の暴力じみた説教も、99.9%心に届かない。
しかもそういった類の声掛けは、色々と不慣れで勉強も経験もしていない場合だと取りがちな行動でもある。(僕もそうだった)
そこで今日は、極めてシンプルながら建設的な声掛けについて、『アドラー心理学』の解説本に載っていた手法を紹介したいと思う。
『かわいそうな私』と『悪いあの人』
この項の文言の出典は、名著『嫌われる勇気』の続編にあたるコチラ。
それによれば、誰かから相談を受けたとき、『ある観点』から出てくる窮状は注意すべきだという。
それは、『かわいそうな私』か『悪いあの人』
である。例えばこの『かわいそうな私』に当たる言葉としては、
『何をやっても上手くいかないんです・・・(だから可哀そうでしょう?)』『どうにもやる気がでないんです・・・(だから私、辛いと思うでしょう?)』
みたいな感じ。つまり、何を語るにせよ、『同情』を誘うような意識を感じれば、『かわいそうな私』というカテゴリに入るとみて差し支えはない。
そして『悪いあの人』というのは、
『あの人が許してくれないんです・・(ヒドイでしょう?)』『言うことを全然聞いてくれないんですよ・・(そんな人、悪いでしょう?)』
みたいな感じ。つまり、何を語るにせよ、『同情』に加え『他責』を誘うような意識を感じれば、『悪いあの人』というカテゴリに入るのだ。
-さてさて。アドラー(というより本に出てくる哲人)によれば、こういう話は聞き流してスルーする、とのことなのだ。
理由は、変えられない『過去』に目を向けている限り、先を見据えた話は出来ないからである。
そしてその本には、『自然に、しかし強く未来に目を向けさせるフレーズ』があったので、それもシェアする。
『これからどうするか』
例えば『テストが芳しくない』『成績が振るわない』という状態で、『私はかわいそう』『周りがひどい』という考え方をするかぎり、先には進めない。
それを否応なしに未来へ目を向けさせ、かつ具体的な行動を促すセリフとして、
『これからどうするか』
は最強のものの1つである。
僕自身も、ひたすらテストがふるわなかったことをくよくよと悩む生徒のお悩みを1時間聞き、その上でこのセリフを言ってみたことがある。
すると不思議なことに、
『この点でA・B判定が出る大学を探します』とか、『他の予備校のシステムを使います』みたいな前向きなコメントが自然と飛び出したのだ。
自責・他責・同情に終始する限り先には進めないが、自覚して自分で自分を矯正するのもまた難しい。
とはいえこちらからそれを打破する声掛けも、経験値も知識もなければ難しい。
そういう風ににっちもさっちもいかない状況であられるなら、このフレーズを悩める生徒にかけてあげてはどうだろうか。
それでは今日はこの辺で。