何の当てつけか知らないが、僕の勤める校舎のポストに、【超実力派講師が教える!!!】みたいなフレーズが目立つチラシが入っていた。
それは受験を目指す小~高校生に向けた通信教育のパンフだったのだが、確かに何かすごそうな印象を強く受ける。
さて。天邪鬼な僕は、ここでふと思ったことがある。
『超実力派講師と、僕みたいなフツーの講師を隔てる最大の壁って、一体なんだ?』
という素朴な疑問だ。きっと地頭の良さも関係あるだろうが、説明下手なガリ勉も世の中にはいるし、多分そこが最たるものではない。
ただ、結局頭で考えても分かるわけはないので、有名講師の動画授業や、その参考書を、改めて軽く確認してみた。
そして、『あー、もしかしてここかなぁ』と思うファクターを見つけたので、今日はそれをメモ書きとして残しておく。
『特徴的な言い回し』が上手い下手を決める?
それは、『ある特定の言い回し』で、言ってしまえば『例え話』である。
いわゆる実力派とされる講師は、『分かりやすい説明のプロ』だ。
では、その『プロの授業』の特徴は何かというと、その『例え話』の秀逸さだと感じる。
超カタい言葉も、理解しがたい文法も、身近なテーマを使った例え話で噛み砕き、『あぁ、そういうことか』と聞き手に思わせる。
難解なテーマを扱っているはずなのに、その意識を抱かせない。だから楽しいし、だから分かる。プロの授業は本当にプロフェッショナルなそれなのだ。
-ここまで考えてみると、今度は『プロが使う例え話』に、何かしらの傾向は無いのかと気になった。
これがつかめれば、自分の授業にも何とか応用が利きそうだ。
ということで以下、それの考察に移る。
『例え話』の傾向とは?
かなり難しかったが、一応の分類は出来た。
・『語句の説明』ではなく、『なぜそうなるのか』の根拠を述べる際、よく使われる。
例)なぜ『No other city』のcityが単数なのか?例えば岩手県の広さと、秋田県・福島県を足した広さは、後者の勝ちでしょ?
つまり、一対多数なんてのをOKにしたら、比較する意味が無いよね。だから、No otherを使う場合は、単数形が原則だよ!
・その例え話に、専門用語はほぼ使われない。
・ただし、シンプルな単元での使用頻度は低い。
という感じだ。もちろん、これらはプロの技術なので、丸ごと僕らがパクるのは難しい。だが、頭の片隅には少なくとも、
『聞き手の身近なテーマに置き換えて、難解なものに絞り、用いる』
くらいの意識は持っておいた方が良さげだ。多分これで話は変わる。
―ということで、さすがに抽象論になり過ぎたので、一応最後に僕なりの『例え話』の考え方を添えておこう。
『例え話』の考え方。
『例え話』とはすなわち、
難解な理論や語句を、同じ意味や構図を持つ別の平易な表現に置き換えて説明すること
だと僕は感じている。となれば、異なるものでも、その繋がりさえ見つけれられれば、『例え話』の取っ掛かりがつかめるという話になる。
そこで僕がよく考えるのは、ある説明したい語句があったとして、それをどこまでも『抽象化』するとどうなるか?というものである。
つまり、かっちり
例を挙げよう。
『限界生産力逓減の法則』というものがある。経済学の用語だが、その意味は以下の通り。
他の生産要素の投入量を一定としたとき,一つの生産要素の投入量を増大させることに伴う生産量の増分(限界生産力)は当該生産要素投入量の増加とともに減少するという経験法則。
もうチンプンカンプンである。ということで、これを抽象化してみよう。
何かを使えば使うほど成果は増えるけど、だんだんその成果の増え幅は減っていくよ
みたいな具合。まだあんまり分からない。
最後に、これに似ている別の減少を探してみる。つまりこの場合だと、『成果の増え方は途中から頭打ち』みたいな現象を考えればいい、となる。
では、こう伝えたらどうだろうか。
例えば、教室の掃除は1人でやるより2人でやった方が早く終わるよね。
でも、30人で掃除しても、30倍の速度では終わらんでしょ?『限界生産力逓減の法則』も、そんな感じのことだよ。
さすがにさっきよりはマシになったと思う。
こんな風に、一度敢えて徹底して抽象化することで、『なぞなぞ』を解くように例えが探しやすくなると僕は考えている。
終わりに。
ということで、僕が思うに、講師の力量と例え話の上手さには、密接な関係があると感じる次第である。
僕も偉そうなことは言えないが、自分が武器にしたい単元は、例え話をしっかりと練り上げておくのがベターであろう。
『今でしょ!』みたいな決め台詞より、わかりやすい具体例。そこを肝に銘じて、僕もまた自分の指導を見つめ直していく所存だ。
それでは今日はこの辺で。