休校期間が延びた影響で、追加の課題が出された学校も多い。
すると、心が鬱々として、モチベーションに難儀している生徒が多いだろうという思いやりか、超優れた人物の努力をまとめたプリントを配るところもあった。
例えば、『偏差値70の超秀才校に受かったOくんは、小学校6年間で1000冊以上の読書を行った!』とか。
また、『プロ野球に行ったCくんは、運動に秀でているのは当然、学業もオール5だった!その秘密は・・・』という感じ。
他にも、『東大生が教える~』とか、『ハーバード式~』という極めて優れた人たちの取り組みが目白押しであった。
しかも恐ろしいことに、それぞれについて感想と自分に活かせるところを書くという課題もセットになっていた。
うーん。
―悪いことは言わないから、二度とやらない方が良いと思う。何故かというと、それで大抵の子は心を壊すのが予想できるからだ。
今日はそんなつらたんなお話。
『理想』が突き付ける『現実』。
ぶっちゃけまずはこの辺を読んでいただきたい。
これらを基に、『立派な人』を並び立てることのリスクを掻い摘んで説明する。
まず、大きな目標や理想は、そもそもネガティブに作用する可能性が圧倒的に高いのだという。
この原因は、『現在の自分との落差』にある。つまり、こんなに素晴らしい人に比べて俺って・・・という風に、自尊心が自動的に折られていく感じだ。
『小6でも本がたくさん読めるのに俺って・・・』とか、『この人は運動も勉強もできるのに、私って・・・』という感じ。
詳しい統計は無いが、体感としてはこういう風に捉えちゃう人の方が多いような気がしてならない。『俺も頑張るぞ!』とは、同じく才能ある者しか思わないのである。
こういうと、『いやいや、この中に書いてある教えをちゃんと参考にして、賢くなればええやんけ、甘えるなや!』と言われそうだ。だがそれも、ハッキリ言ってダウト。
例えば、大抵どのボディービルダーも、背中をバキバキにするためのトレーニングとして『チンニング』を推している。
―しかしそもそも、これができる時点で、ある程度の筋力があると思われないだろうか?筋トレをする筋肉が無い人はザラにいるのだ。
それは学習でも習慣でも同じ。文庫本を年に300冊以上読むというのは、申し訳ないが努力で何とかなる範疇を超えている。
そうなれば、「せっかく教えが書いてあるのに、それをトレースできない自分って、やっぱり駄目じゃないか!」と、二重で精神にダメージが行く可能性も高い。
その生徒のためを思った行動で心が砕けるとか、笑えない冗談にもほどがある。当然プラスに作用する生徒もいるだろうが、それは少数派というのはご承知いただきたし。
では、モチベアップには、何をどう伝えるのか?
これまた断言するが、そもそも当人に『やる気を出さねばならない動機』が少しでもなければ、暖簾に腕押し・糠に釘である。
そんなわけで、こちらの説得で心が動くケースは極めて稀だ。(だからドラマの名シーンになる)
―となれば、そういった生徒の心を動かすには、『熱意』は別に要らないと分かる。必要なのはきっと、『そうすることによるメリット』である。
例えば、『この勉強法を使えば成績が上がる!』なんて、勉強嫌いの生徒に言っても響くまい。想像に難くない。
しかし、その場合でも、『宿題が面倒なら、それを早く楽にする方法があるよ』と言えば、同じ学習法というテーマでも、コロッと食いついたりする。
後者はその生徒から見れば、はっきりとしたメリットだからだ。こちらの方が正直、言われた側として嬉しく有難い。俗的だろうが、それで良いじゃんと思う。
だから僕は、どうせ貰うなら『効率的な勉強法まとめ』とかのがありがたい。必死にまとめた天才の逸話より、ドラゴン桜のコピーの方が有意義だとさえ思う。
まとめれば、『よくわからない熱さ』より、『そうすることの利点』である。生徒が何を求めているかに焦点を合わせねば、ぶっちゃけ色々とチンプンカンプンになる。
もし実践した心当たりがあるのなら、少しその後の反応や様子に思いめぐらした方が良いかも。メンタルと言うのは本当にデリケートで厄介なのだ。
ということで今日は、やや志の低いテーマではあったが・・・。
言いたいことは言ったので、この辺までとする。