羽生善治氏の著作が好きだ。(棋風とかは素人すぎてよくわからない)
今日は何度も読んだ『決断力』ではなく、まだ3~4回目くらいの再読となる『大局観』について、特に生徒に伝えたいことという観点で書いてみようと思う。
では、導入もそこそこに、以下続き。
【大局観】とは何か?
元々はボードゲーム全般で使う用語らしいのだが、ざっくり言えば『一歩引いた視点で物事を俯瞰し捉えること』という風に書いてあった。
現状だけに囚われることなく、その他いろいろな視点や観点を持つことで、様々な手を打てたり、継続的な成長に繋がったりする、非常に大切な力である。
この本はそれをメインテーマに書かれたものであり、必然的に『勝負』や『集中力』についても触れられている。
以下、より細かく紹介しよう。
『勝利』と『敗北』への向き合い方。
『大局観』を養うことにおいて大切なのは、『勝利』の際も『敗北』の際も、それに固執しすぎないことというメッセージを感じた。
例えば『勝つ』というのは誰にとっても嬉しいことだが、それにどっぷりハマると、次第に『負け』を異様に恐れるようなメンタルにも繋がり得る。
或いは変にハイなテンションにギアが入り、自分のフォームを無茶苦茶に崩すような手ばかりを打つようにもなるらしい。(常時ホームラン狙いで打席に立つようなものだ)
そうやって『勝つ』ことに囚われると、その内大崩れが待っているのは想像に難くない。だからこそ、ここでも一歩引いた視点が大切なのだ。
本の中では、その防止策として『基本動作を繰り返す』というのが提案されていた。それに取り組む中で異常に気付き、歪んだセンサーを直せるのだという。
そうすることで、『勝っている状態』の中でも『危機感』を抱くことができるため、極端にブレた心をニュートラルに戻せるのだ。これはすごく納得。
確かに、『絶望しきって死ぬために、今を熱狂して生きろ』という本でも、『わざと負けを作ることで、平穏を取り戻す』みたいな記述があった。
もちろん大敗して自信の全てを破壊するような真似はしなくていいが、覚えておきたい心構えである。
―ただし、その感情に取り込まれがちという意味では、『負け』の方が遥かに強力だと思う。身の処し方としては、こちらに関する方を知っていた方が良さげだ。
これについては、『検証し、反省し、忘れる』というのが提案されていた。『負け』の要因を分析し、活かせる点を洗い出したら、精神的な反省はしない、という具合だ。
もっとも、これをネガティブな人や、子どもが脳内で実践するのは難しいので、紙に書き出してから冷静に分析するという方法がオススメである。
負けも進歩のプロセスと捉え、必要なこと以外は前向きに忘れるくらいがちょうどいいのかもしれない。
集中力を鍛えるには?
本の中では、『集中力』の鍛え方についても述べられていた。その方法は以下の通り。
① 好きなことに熱中し、『集中』しているという感覚を得る
② 可視化の難しい抽象的なことを考える(数学とか)
③ 何もしない時間をあえて作る
④ 一つのことにじっくりと取り組む
⑤ 時間と手間のかかることに挑む(長編小説がオススメらしい)
⑥ 進化を目標とし、また日々意外性(→動機に繋がる)を見出しながら、反復練習を積む
―正直全部に解説を入れたいが、今日は1つだけ。
意外と盲点に思われるかもしれないが、好きなことに徹底してハマるのは悪いことでもなんでもない。感覚として、むしろマストのモノだ。
僕自身高2の時は、異常なまでにモンスターハンターに熱狂した。
しかし今は完全に止めちゃっているので、子どもが何かに夢中だからといって過度な心配はいらないような気がする。
無責任に聞こえるだろうが、何かに徹底してハマる体験は是非とも積ませてあげてほしい。
『リスク』を取らないことこそが『最大のリスク』。
そしてこの本最大の名文句は、【『リスク』を取らないことこそが『最大のリスク』】というものだ。
具体的には、リスクを恐れ、現状維持に固執したり、得意な戦法ばかり採用したりすることで、長期的には悲惨な結果になるという意味である。
とはいえ、無知に返りリスクをやたらめったらに取るのも得策ではない(というか無理)と述べられており、結論としては、
リスクを真正面から受け止め、その不安に打ち克つ
と結ばれていた。
僕ら塾講師で言えば、普段の教え方を何年も使うのではなく、常にアップデートを心掛けたり、他の人の教え方を取り入れたり、といった具合だ。
それがハマることもあれば、いまいちだったことも数知れない。だが、得られる経験値はどちらにせよ大きい。
普段の勉強で言えば、基本問題ばっかりやるのではなく、時たま難問に挑んだり、検定問題を使ったりという話だろうか。
リスクに打ち克つヒントとしては、まず『知識を得たら、それを活用する』のをセットに考えるというのもあった。つまり、鵜呑みにせず、知恵に変えるというものだ。
ここを自動化できれば、ある意味周りからみれば『リスク』とされる行動も、ルーティン化されて心的な負担は相当減る。
例えばある公式を覚えたら、例題を必ず解くという感じだ。そしてその場で経験値を得てしまうのだ。
後は、問題の全体像に目を向け、感情を意識して割り引き、第三の選択肢に惑わされないという『意識面』でのコツもあった。(ただこれはプロの技だと思う)
そして『決断』をしたら、『他の選択肢が持つたられば』をドライに切り捨てて、自分の選択を自分の責任で受け止めるという覚悟を持つ―と書かれていた。
この断言には心底しびれた。これが理性と論理的な考え方でできたら無敵だろうなぁ。憧れるも遠い世界である。
終わりに。
勿論、書かなかっただけで、他にも教えやエピソードは山積みだ。
他のプロ棋士の流儀やすごいところなども触れられており、『将棋』が軸なのは間違いないがその網羅する知識は非常に多岐にわたる。
文体も非常に論理的で読みやすいので、国語の勉強にもオススメである。(ちなみに『決断力』の方は、山口県の某私立中学校の問題文で出ている)
皆さんが本書を手に取るきっかけになれば嬉しい。
では今日はこの辺で。