精神年齢9歳講師のブログ

"よいこ"から程遠い目線から、授業のネタ、講師としての日々、そしてたまには教育や子供について、真面目なことを基本毎日書いてます。

知名度は低いが、深刻度は高い。【算数障害(ディスカリキュリア)】について調べてみた。

お酒を抜いて3日。体調が驚くべきスピードで回復していくことに、驚きと恐怖を感じる中元です。

 

さて。今日は以前記事にしている気満々だったが、実際はそうじゃなかったことをテーマに書き殴ろうと思う。

 

それは【算数障害(ディスカリキュリア)】である。

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https://theconversation.com/dyscalculia-maths-dyslexia-or-why-so-many-children-struggle-with-numbers-104655

 

なぜこれをテーマにするか?

 

本人には当然言っていないが、これを疑いたくなるレベルに算数の技能が学力不相応の生徒がいるためだ。

 

【数】に対し猛烈な抵抗を示したり、文章題から【加減乗除】を見抜くことができなかったり・・・。小学校のテストで1桁を割と平気で取ってくる。そのタイプ。

 

勉強をサボっていたとか、単に「苦手」程度であれば、こちらが打てる施策は割とある。30点を60点以上にするノウハウは、どの塾でも結構貯まっているのだ。

 

しかし、0~10点をさまよっていると、何か別の原因を疑わずにはいられない。それこそ、こちらが想定できないどこかに、だ。

 

しかもこの辺をうかつに口にすると、障碍者差別!」「講師の責任転嫁!」と言った風に脊髄反射しちゃう人も多いので、デリケートな部分ではある。

 

だからこそ、僕はこの知名度が低いけど深刻度が高い【算数障害(ディスカリキュリア)】について、今一度学びを深める必要があると考えている。

 

今日は長大になったけど、以下詳細に書いていきます。

 

 

序論:そもそも『学習障害』の定義をご存じですか?

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本題に入る前に、学習障害】の意味をまずは説明しておこうと思う。

 

というのも、まだまだ僕が周りの人の反応を見る感じ、【知的障害】と同一視されている方が多いという印象だからだ。

 

さて。学習障害とは、改めて何か?一言でいうと、

 

【知的障害は認められないのに、学習に関する特定の技能について、著しい困難を示す状態】

 

という感じである。(※ちなみに「知的障害」とされる基準の1つは、【IQが70以下】らしい)

 

したがって、学習障害】=【勉強が全部だめ】というワケではないので、ご注意いただきたし。

 

例えば、英語が全くできず、ひどく点数が低いのに、他の科目は軒並み偏差値60超えとかよくある話なのと同じだ。

 

有名どころだと、【ディスレクシア】とか【ディスグラフィア】だと思うが、その総称が学習障害だと考えていただければよろしいかと思う。

www.madreclinic.jp

 

そして、今日のテーマである【算数障害】は、【学習障害】の1つである。これは、「算数はそもそも苦手な子が多いよね」という先入観に隠れて、認知度が低い印象だ。

 

結構がっつり調べてみると、僕も知らないことがぼこぼこ出てきた。以下、なるべく項目ごとに整理しつつ、書いていこうと思う。

 

【算数障害】ってなに?判断基準はどこにある?

【算数障害】について一番わかり易く説明されていると思ったのは、このインタビューであった。

www.kobetsu.co.jp

 

まずは、【算数】そのものの定義からご紹介する。

 

そもそもこの【算数】もまた"総称"のようなものであり、以下の4項目の技能に、さらに細分化されるようだ。

 

①数処理

→「1」は「いち」であり、「ものが1つある」という意味でもあるという理解。

 

②数概念

→基数性(例:数の大小)の理解と、序数性(例:列の何番目という考え方)の理解。

 

③計算

加減乗除のみならず、暗算や筆算なども含めた計算。

 

④数的処理

→いわゆる文章題のこと。

 

ではこれらの技能において、著しい困難を抱いていると、どのような特徴が出てくるものなのか続けて紹介すると、こんな感じだ。

 

①数処理に困難がある場合

→「いち」や「ONE」と言われても、「1」のことだと認識できない。

 

②数概念に困難がある場合

→数の大小が理解できず、また自分は列から何番目といった質問に答えられない。

 

③計算

→和が20以下でも、暗算ができない。また、九九の習得が困難。

 

筆算をすると、くり上げ・下げを頻繁に間違える。

 

 

④数的処理

→文章題が解けない。 

 

といった感じだ。そしてこれらの内1つ以上が発露している状態が、いうなれば【算数障害】ということである。

 

※ちゃんとした定義は、【IQは90以上だが、四則演算に極端な困難を示す】という感じらしい。*1

 

尚、2012年に文部科学省が、教員を対象に実施したアンケートによれば、全生徒の2.8%が算数障害の可能性があるという状態とのこと。*2

 

だから実際は、もっと多いのではないかと考えずにはいられない。

 

尚、今回は研究が進んでそうな海外の記事も参考にしてみた。(どうでもいいけど、この記事の英語、超読み易かった!!)

www.understood.org

 

こちらによれば、さらに興味深い示唆が書かれていたので、ざっくりと紹介しよう。

www.youtube.com

 

まず、【算数障害】の原因は、当然ながら不明とのことであった。(ただし、両親から遺伝する可能性がある・・という考察もあった。信憑性は【?】((Developmental dyscalculia is a familial learning disability)))

 

今のところ、脳の機能に関連しているとは言われているが、まだ色々と仮説の域を出ていないようだ。簡単に紹介すると、

 

「数」の概念を処理する脳の部分が機能していない?

 

本来「数」の処理に使うべき領域が、別のものの処理に使われている?

 

といった説があった。ぶっちゃけこの辺から得られることはあまりなさげ。

 

他にも、データ元は不明だが【全学生の7%はいずれかに困難さを抱く】と示されていたり、【数字を見るとパニックを起こすケースもある】とも言われていた。

 

―実は、今見ている生徒にも1人、ワガママの次元じゃないくらい猛烈な拒否反応を「数字」に抱く子がいる。

 

注射嫌いな子が、注射に対して向けるのと同じくらい抵抗するのだ。(ちなみにその胸の内は、後述する【体験談】の項で詳しく紹介したい)

 

ここをねじ伏せて無理やり数に取り組ませるのは効果が無いと断言されていたので、気を付けた方が良さげである。

 

あと、ディスカリキュリアとディスレクシア(主に識字障害)についての関係性も触れられていた。

 

どうやら、ディスカリキュリアと診断された生徒は、同時にディスレクシアを抱えている可能性が50%もあるらしいのだ。(逆もそうらしい)

 

これまた僕の私見だが、ちょっと可能性を感じている2人の生徒は、ともに極端に国語が苦手だ。特に片方は、漢字も苦手で、漢字テストはいつも10点とかである。

 

尚、保護者が「もしかしたら・・」と疑うケースについても、海外の記事では触れられていた。

 

基本【算数障害】は、就学後に判明したり、そこまでは問題にならなかったりするものだが、就学前にも「もしや?」と言える特徴があるのだという。

 

それは、"量"を認識することが顕著に苦手な場合である。例えば、「ボールを3つ持ってきて」と伝えても、1個とか5個とか持ってくるケースのことだ。

 

もちろんこれはあくまで"可能性"に過ぎないし、その傾向があるからと言って自分の子供や、まして人様の子を人生の早い段階からやたらめったらに疑うのは論外である。

 

ソースは失念したが、【2つ下の学年の内容ができない】以上の遅れが見えたとき、初めて相談するのを考えた方が良い・・とのガイドラインが確か、ある。

 

診断は資格を持った専門医にしかできないのだ。少し本題とズレたが、改めて念押ししておこうと思う。(お前はどうなんだという指摘ももっともだけど)

 

【体験談】から紐解く「算数障害」。

ただ、今まで挙げた情報は、すべて第三者目線のものである。さらに詳しく「どんなものか」を理解するには、やはり体験談を参考にするのが有効だろう。

 

それを詳しく説明した漫画を発見したので、紹介する。そしてこの項では、その中でも非常に気になった内容を、私見を添えて書いてみる。

note.com

 

まずは、【数字で事実を記憶できない】という話だ。例えば、料理のレシピに「数」が使われていると、振り向いた瞬間に記憶から消えるレベルらしい。

 

これについて、【そもそも脳に数を処理する機能が全くないような感覚】という考察も書かれていた。

 

イメージで記憶して、後から指折り数えてカウントするなど、他の機能をフルで使いそれを補うため、数字が飛び交う場だと極端な疲労を感じるのだという。

 

また、こういった困難を抱えていると、当然人生の節々で辛い目・憂き目に遭うことも多いらしく、それらトラウマも合わさり、数字に恐怖心を抱いているともあった。

 

「計算を目にしたときの、なんともいえない重苦しくてゾッとする感じ」「胸に突き刺さる何とも言えない痛み」

 

という描写には、悲痛なリアリティを感じさせられる。先に紹介した生徒も、似た痛みを覚えているのだろうか?

 

そして最後に、【あっ、矯正すれば直ると思っておられる】という気になるコメントもあった。

 

漫画にも描いてあるが、大人になってから小学生のドリルをやり直しても、全くできないとあったことから、やり方が違うとかじゃなく、もっと根深いようなのだ。

 

イメージがし辛いが、色弱じゃない人が、色弱の人の見る世界を想像しろと言われるのと似たようなものだと僕は勝手に納得している。

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色弱と言ってもいろいろな見え方がある。タイプ別にみる物の見え方 (2017年1月28日) - エキサイトニュース



だから漫画でも最後に書かれていたが、【変えようと努力するのではなく、受け入れてほしい】とあった。これこそがまさに、本音だろう。

 

つまり、「こうすれば算数障害克服できるかも!!」とアドバイスをされるより、「じゃあ、わかり易くメモ渡すね!」といった思いやりの方が必要という話なのだ。

 

僕も自分が良かれと思ったことが当人を傷つけてはいないか、思い上がらないように重々気を付けたいと思う。

 

では、塾でできることは存在するのか?

 

これらを踏まえると、塾が特別ケアできることは、ほぼ無い気がしている。強いて言えば、特別な教材を用意してあげることかな?

 

あるいは、塾で研修みたいなことを行い、全員を【理解者】にしておくこともそうかもしれない。

 

ただし【算数障害】は、現時点の知見では、成長しても治ることはないのだ。だから、能力を身に付けさせよう!という意識がうまくいくことは、たぶんない。

 

―ちなみに、現時点で【推奨】されていた取り組みは、「実際の"感覚"に数をリンクさせること」だとあった。

 

例えばお風呂で10まで数えたときと、30まで数えたとき、どちらが温まったかと聞くことで、数の大小を覚えさせるという感じだ。(これは世界共通らしい)

 

また先ほどの英語の記事では、「特別な教材を使い」「ゲームを通じて」「たくさん演習させること」も、改善が期待できると紹介されていた。

 

ただそれ以上に、やはり強調されていたのは、こちらの理解とケアだ。例えば電卓の使用を許可したり、試験時間を延長したりといったアシストである。

 

しかしそのためには、「もっと広い範囲への啓発」と、「確固たる診断」が求められるため、ハードルが高いのもまた事実だ。

 

だから結局、当たり障りが無い決意に着地する。

 

できることを、できる範囲で。

 

ここを重視し、僕は生徒と向き合おうと思う。

  

終わりに。

 

ということで、自分自身の記憶の整理のために記事を書いたら、あれよあれよと5500字にもなってしまった。過去最長レベル。

 

【算数障害】の認知の低さと、その実情の深刻さ、そしてそもそも【算数障害】とは何かが、少しでも伝わっていれば嬉しい。

 

もちろん勉強をサボってたせいで数学が苦手というのであればアウトオブ問題なのだが、努力しているのに一向に成長しない場合もあることだと思う。

 

そういった際に、関わる人すべてを救うことになるのは、【知識】かもしれないのだ。そしてそれは、多分結構多い。

 

僕も曲がりなりにもこの世界に携わる以上、勉強は怠らないようにしようと、改めて思った。

 

では今日はこの辺で。

 

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*1:熊谷恵子さん:そうですね。WHO(世界保健機関)が作成した「疾病、傷害及び死因の統計分類(ICD-10)」(※1)では「算数能力の特異的障害」として算数障害が挙げられています。「この障害は算数能力における特異的な機能障害で、全般的な知的障害<精神遅滞>や不十分な学校教育のみでは説明することができないものを包含している。欠陥は代数、三角法、幾何、微積分などの、より抽象的な数学的能力よりは、むしろ加減乗除の基本的計算能力の習熟にかかわっている」とあるように、高度な算数や数学についての問題は含まれません。つまり、算数障害として考えるのは、たし算、ひき算、かけ算、わり算の四則演算の分野が中心です。そしてそれ以前の数が書ける、言える、数字の量的な感覚がわかる、計数できるといった分野も含めて困難がないか判断します。 

子どもの算数障害とは? 算数に困難のある子どものサポート法 ~筑波大学教授・熊谷恵子さん~ | まなビタミン より

*2:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/__icsFiles/afieldfile/2012/12/10/1328729_01.pdf