精神年齢9歳講師のブログ

"よいこ"から程遠い目線から、授業のネタ、講師としての日々、そしてたまには教育や子供について、真面目なことを基本毎日書いてます。

【実は二律背反】塾のサービスとは、成績向上という”結果”か、それとも、わかるという”感覚”なのか。

誰もいない校舎って、すっごく集中できますねぇ。中元です。

 

はい。今日は別の講師が保護者の方と立ち話をしているのを聞いて、自分の中で引っかかったことをテーマに記事を書いてみようと思う。

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会話の内容をすべて書くのは憚られるので、その核となるやり取りだけ抽出する。それは、こんな感じだ。(ちなみに、このやり取りになる前の流れも不明)

 

講師「わからないところがあったら、自分で考える、思い出そうとする時間が大切なんですよ」

 

保護者「でもわからないところを教えてもらう場所が塾じゃないですか、だからすぐに助けてほしいんですよね」

 

―ちなみにこの後は、言葉を変えつつ双方が同じことを伝え合うという感じで結構な平行線を辿っており、終わりを見届ける前に僕は移動したので、結末は知らない。

 

さて。僕はこのやり取りに、塾が提供するサービスに関する認識のずれが凝縮されていると、強く感じている

 

塾のサービスとは、成績向上という”結果”か、それとも、わかるという”感覚”なのか。

 

正直言ってこれら二つは同一の直線状にありそうなものだが、個人的な肌感覚としては、別の方向を向いている気がする。

 

今日はそないなお話である。

 

 

”わかる”と”できる”はどれくらい別物なのか?

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”わかる”と”できる”はどれくらい別物なのか。少し言葉を変えて説明してみよう。

 

僕にとって”わかる”とは、【体験】のことである。今現在の自分の力量では到達不可能な世界を味わうという体験。これがつまり、”わかる”こと。

 

一方、”できる”とは、【再現】だと考えている。得た知識やテクを別の場所で使い、そこで結果を出してトクをする。これが”できる”ということだ。

 

ここだけ切り出せば、体験のあとに再現がくるという一つの流れが見えるのだが、僕はどうしても似て非なるものと思えてしまう。なぜか?

 

これについては、やや極端な例えだが、恋愛に置き換えると結構はっきり違いが見えてくる

 

例えば、僕みたく全然モテないタイプの男にとって、「モテる」状態とは、憧れこそすれ手が出ない世界であり、つまり価値を持った何かとなり得る。

 

だからこそ、これを疑似体験できるサービスが、詳述しないがあちこちに存在しているのは、言わずとも周知のとおりである。

 

―しかしここでいくら【体験】を積んでも、実際にそれを用いて【再現】ができるかと言われれば、少し首をかしげてしまうのではないだろうか。

 

キャバクラに通い倒す男が、自動的に不特定多数の異性から好意を寄せられることはまずないだろう。むしろ、そのスキルには一切寄与しないとさえ言える。(失礼!)

 

―では一方、恋愛が【再現】、つまり”できる”とはどういう状況か、再び言葉を変えて考えてみよう。

 

すると、まず手に取る教材(?)の性質が変わってくる。例えば会話のコツとか、収入アップとかファッションとか、もっと実践的なHowtoが、別物として存在する。

 

これを使って首尾よく目的を達成できたとき、その人はこれらの知識を【再現】できたということで、つまり"できている"状態と言える、というワケだ。

 

―これを勉強に置き換えると、以下のようになる。

 

【わかる】とは、あくまで書いてあること、言っていることが理解できるという実感、体験。

 

【できる】とは、得た知識を活用し、自分の目的を達成するなど、狙った結果を出すのに活用できる状態。

 

という感じだ。さてさて。これら2つは、ぶっちゃけ両方同時に達成できると言っている人も多いのだが、繰り返すが僕はそう感じてはいない

 

これらはあくまでも別物であり、切り離して考えて、両方の時間をきちんと取らないと、達成することは不可能だと捉えている。

 

もし一気に達成できるのなら、わかり易い講義を延々と聞かせれば全員成績が爆上がりするはずである。そうじゃないということは、そうじゃないのだ。

 

しかし、そうはいっても、「わかれば、自動的にできる!」と信念のレベルで考えている人は、結構多い。その方に言わせれば、わかり易い説明さえあればいいのだという。

 

なぜこのような考えが浸透しているのだろうか。少し考えたが、どの学習塾も、徹底的にチラシやCMで【わかり易さ】ばかりを推しまくっているからではなかろうか。

 

「わかることが成績アップの秘訣!!」というアレ。それに触れ続ければ、なるほどそういう考えをもったとして、何にも不思議な点はなくなってしまう。

 

・・・ということで次項では、これについての少し身も蓋もないからくりを、ちょいと書いてみようかなと思う。

 

”わかる”から”できる”まで。

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では、そもそも論から。実は大手の塾ほど、全面的に「わかる」を推しながらも、それを「できる」ようにするまでのシステム作りが非常に上手なことが多い。

 

例えば授業の後にテストを用意し、それに合格するまでは次に進めないという仕組みもそうだ。突破するには、強制的に「できる」まで知識を昇華せねばならない

 

つまり、わかるだけじゃ成績は上がらないよねってことなど、重々承知しているのだろうと、僕は納得している。

 

ぶっちゃけ成績を上げるには、すごくシンプルに言ってしまえば、最低限の説明と良質な演習がカギなのだ。

 

ただし"できる"ことに特化してしまうと、どうしても"わかる"体験が減ってしまう。むしろ、解けないという現実にぶつかり過ぎて、やる気が萎えるのも、確かにそうだ。

 

しかし難しいことに、"わかる"ことに特化してしまうと、ただただ疑似体験をして「たのしかった」という感覚に終始して、結局成績が伸びてこないのだ。

 

やはり大事なのはバランスだ。この比率は、講師のキャラや単元の性質・難度によってバラバラなので一言で言うのが難しい。

 

だが、"わかる"ための説明に要する時間が、授業時間の6~70%を超えてくるとかなり厳しいとは、結構確信をもって思っている

 

「わかること」と「わからせること」は絶対的な正義に思えるが、そこに【再現】する練習を添えないと、厳しい話だが、お互いに自己満足となるだけなのだ。

 

全振りにした先に、幸せはないのかも。僕はある意味、この辺については諦めている。

 

余談:特化していい稀有なケースとは?

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とはいえ、数は少ないのだが、それぞれに特化していいケースは存在する。まず超勉強ができる子は、"わかる"までの時間を、退屈と解釈することが多い。

 

説明の途中で終わりが見えれば、「OKっす」と理解し、しかもそれをすぐに問題に活かして答えを得るようなタイプは、とにかく良質な問題を渡し続けた方がいい

 

そして最低限のところだけアシストを入れる感じだ。さながら、プロアスリートとコーチみたいな距離感がちょうどいい、と言える。

 

一方、"わかる"全振りにしていい生徒とはどんな子か。以前記事にしたのだが、勉強そのものがとても苦痛であったり、あるいはとても苦手という子だ。

jukukoshinohibi.hatenadiary.com

 

このようなタイプは、成績を伸ばしたいという欲が出るまでは、ひたすらに"わかる"という疑似体験を売り続けた方が良い

 

答えにたどり着けるよう導くのではなく、答えをほぼ言ってしまうような感じ。一時期僕はこのやり方にジレンマを感じていたが、今はもう割り切っている。

 

―つまりまとめれば、このどちらでもない場合は、"わかる"から”できる”まで、しっかりとシステムを作って指導が要るよという話である。

 

この辺りは手を抜かず向き合いたいテーマだなと、つくづく考えさせられる。

 

終わりに:結論、両方です。

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記事の頭に書いた会話に少し話を戻す。どうやらご家庭の方が懸念しているのは、「子供が間違えること」のようだと僕は受け取った。

 

間違えたら自信を無くす、そして傷つく。だから間違える前に質問に答えてほしいし、赤バツがつかないように横から指導してほしい。そういう願いを感じたのだ。

 

もちろん親心としてはそれが自然なのかもしれない。わが子が打ちのめされる姿など見たくないから、それを回避するようになるのは当然だろう。

 

しかし、それによって将来どんな影が落ちる可能性が出てくるか、きれいごとではないデータがぞろぞろと出揃っているのも現実だ。

わからせるために易しく説明もすれば、できるようにするため、ちょっとした擦過傷を負ってもらうようなこともする。

 

両輪揃って初めて塾が売るべきサービスだよなと、改めてそんなことを感じるやり取りであった。

 

では今日はこの辺で。

 

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