色んな物事に圧迫されている気がするときは、夜空に瞬く星に思いを馳せています。ロマンチスト?いいえ、色々限界な中元です。
はい。シリーズ最長、11週目に突入してしまった。もはや日課になってしまったおかげで、投げ出さずに続けられているけど、意外と根気強い自分に感動である。
jukukoshinohibi.hatenadiary.com
もうボチボチ上巻に当たる部分が終わりそうという段階で、ついに一番激しく難しい論争に突入した。
それについては、まずハッブルさんが新たに巨大な発見をするところまで話を進める必要がある。
ってことで、以下本編。
- 4月4日(月) 新たな分析へ
- 4月5日(火) 未知を知る
- 4月6日(水) 有名な現象登場
- 4月7日(木) 星は動く
- 4月8日(金) 星は遠ざかる
- 4月9日(土) 巨人の肩の上に立つ巨人
- 4月10日(日) 時計の針を逆に向ける
4月4日(月) 新たな分析へ
原子はそれぞれ、熱を加えると特有の光を発する。この性質を研究することで、新たな分野が誕生した。それは、分光学である。
これが宇宙となんの関係があるかなのだが、基本星は【十分に加熱されたもの】なので、分光学で分析可能な光を常に発している。
となれば、その光を分析すれば、その星を構成する元素がみえてくる、ということなのだ。
例えばWikipediaなどをみると、惑星の構成材料なんかがつぶさに書かれているのだが、これが可能なのは分光学ゆえ、である。
かつて知が永遠に届かないとされたエリアに、人類が到達した瞬間であった。
4月5日(火) 未知を知る
当初、分光学は地上での使用のみに限定されていたそうだが、特殊な器具を製作することで、それを宇宙に向ける人が登場するようになったそうだ。
結果、太陽の光を分析することで、太陽を構成する物質がわかるようになった。それだけでなく、波長を分析することで、未知の元素があることも予想されたのだ。
それは太陽神の名前を基に、ヘリウムと名付けられた。地球上では非常に稀なものであるため、予想から発見までは、さらにそこから20年以上を費やすことになるのだが。
ーにしても、言われてみれば、太陽といった遥か彼方の星の組成がわかったからといって、確かに何なのだろう。
実際、「太陽に金があるとわかったとして、どうやってそれを持ってくんの?」と皮肉を言われた研究者もいたらしい。
しかし彼は後年、その発見の功績により、ある金メダルを受賞する。そしてそれを見せつけながら、こういったそうだ。
「これが太陽から来た金ですよ」
なんと、かっこいいことだろう。憧れる言い回しである。
4月6日(水) 有名な現象登場
分光学によって、星が何でできているかを突き止める動きが始まった。
しかしそこからさらに進化して、【星は移動しているのか?】という疑問さえも、光からわかるようになったという。
かつてガリレオも信じたのだが、星というのは定常不変で固定されたものであり、日によって場所がズレるのは、あくまで地球が回っている側だからという論理だった。
しかしそれを考慮に入れても説明がつかないズレもいくつか見つかっており、本当のところはどうなのか、宙ぶらりんになっているところだったのだ。
それを突き止めるべく応用が期待されたのが、【ドップラー効果】である。移動する物体は、その波長に影響を及ぼす、という話だ。
そして面白いのは、移動する物体は、光にも音にも影響を及ぼす、というものであり、その影響は物体が向かってくるか遠ざかってくるかで変わるのだ。
救急車のサイレンが非常にわかりやすい例である。それを基に、分光学を宇宙に向けた結果わかったことこそ・・。
ゆくゆくは大論争を巻き起こす、そのピースの1つなのであった。
4月7日(木) 星は動く
ドップラー自身、光でも同じ現象が起きるとは予想していたが、なにぶん地球上のものはすべて、光に比べたらあまりにも遅いため、検知できないと考えていたそうだ。
しかしこれは、必要十分な速度さえあれば、感知できるという話と同義である。そしてその必要十分な速度を出すものは、宇宙にあったのだ。
ある天文学者がシリウスの光を分析したとき、それにはほんの少しではあるが、赤方偏移と呼ばれる現象が確認された。
これはつまり、地球から猛烈な速度でその星が遠ざかっているということである。(大体秒速45㎞くらい)
そう、分光学により、光でもドップラー効果が確認され、結果宇宙が定常不変であるという旧来の常識に、疑問符が付いたのだ。
そして話は、そろそろあの人に戻っていくのである。
4月8日(金) 星は遠ざかる
まだアンドロメダの位置を巡って議論が紛糾していたころ、ヴェスト・スライファーは困惑していた。それすらも、赤方偏移が見られたからだ。
つまり、高速で地球から遠ざかっているということだ。比較的地球に近いところにあるはずなのに?-だから彼は、まず自分の計算結果を疑った。
しかし、彼の疑念はますます膨らむことになる。さらに精度の高いデータを求めて他の銀河も調べた結果、なんと大多数が、地球から全力で遠ざかっていたのだ。
ちなみに青方偏移を示していたのはほんの数個である。この極端な違いは一体何だろうか?
ーこの疑問に対し、観測により取り組んだ人物が現れる。すでに自身の発見により、ある種のセレブにまで名声を高めていた・・。
エドウィン・ハッブル、その人である。
4月9日(土) 巨人の肩の上に立つ巨人
華やかな社交界に進出したハッブルだが、彼は自身が巨人の肩の上に立つ天文学者であることを決して忘れなかった。
例えば、旅行に行った際、ガリレオの墓を訪ねたというエピソードもあるようだ。そんな彼なので、赤方偏移による論争に挑むのも、至極当然といえる。
そのとき彼は、ミルトン・ヒューメイソンという異色の経歴を持つカメラマンと手を組んでいる。(14歳で学校を中退後、職を転々として、ここに行きついた)
ハッブルは暗闇をじっと見つめ、ヒューメイソンは露光のために完全に指を置いたまま静止する。迸る情熱を尋常じゃない忍耐で包みながら、彼らは銀河の色を求め続けた。
そして彼らはその努力の果て、ある説に辿り着くのであった。
4月10日(日) 時計の針を逆に向ける
ハッブルたちの発見、それは遠くにある銀河ほど赤方偏移が強いという傾向だ。2倍遠ければ2倍速い、という風に。
そうしてさらに観測を重ね、データを集め、表に起こし、ハッブルはそれを発表した。ただし極めて短くシンプルな論文で、である。
おそらくハッブルは、データを集めることが好きで、それを考察することは病的にどうでもよかったという話なのだろう。
実際、そのデータからある気付きを得たのは、他の人たちだった。それは、その速度を基に、時計の針を戻せば、宇宙のすべては点から始まったのではという問いだ。
銀河か今日より昨日、昨日より今日の方が、天の川に近かったことを考えれば、それを延々と戻すことで、特定の点に行きつくことは想像に難くない。
これこそかつて、フリードマンやルメートルが提唱した宇宙モデルそのものだ。過去一笑に付された理論が、新たな観測により、再びこの世に姿を現した瞬間であった。
ってことで今週はこの辺で。