今日は日曜なのですが、授業をぶち込んでやりました。試験前だししゃーなし、しゃーなし。中元です。
はい。実をいうとここ数日はこの洋書の内容のテンポが悪くなり、話が進まないのもあって少しだけダレ始めたところである。
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それくらいその時代は遅々とした進歩だったということなのだろうけど、類似の話をずっと読んでいる気分になるため、ちょっときつい。
まぁ愚痴を言っても仕方ないよな、ってことで、今週もザクザクと読んでいきましょう。
- 5月9日(月) あの人を疑えるか?
- 5月10日(火) 後押し
- 5月11日(水) 旧世代
- 5月12日(木) アップデートを繰り返す
- 5月13日(金) 解かれゆくギャップ
- 5月14日(土) 最後のピース
- 5月15日(日) 未知を創造する
5月9日(月) あの人を疑えるか?
ビッグバンモデルには、ある決定的な欠陥がある。それは、宇宙の年齢より、地球のそれの方が高齢という問題だ。岩石を分析した結果、わかったらしい。
だが、宇宙の年齢とは何なのか?これは、赤方偏移やセファイドの規則性などからスピードを算出し、導出されたものである。つまり、計算結果なのだ。
そしてこの計算を行ったのが、エドウィン・ハッブルその人である。ビッグバンモデルに辻褄が合うとすれば、この人が算出した宇宙の年齢が誤りであることを意味する。
しかしこの計算は、他の科学者が独立で同じ数値を出したり、莫大なデータを使用した行ったり、そもそも天文学の大家が行ったことだったりで、疑う人は皆無だった。
だが、第二次世界大戦がはじまると、話が少しずつ変わり始める。戦争により天文台を独占することに成功する人が現れて、新たな観測を行ったのだ。
結果、それが何を意味ことになったのか・・・。それは明日以降のお楽しみである。
5月10日(火) 後押し
ウォルター・バーデ氏は自身の研究のため、パロマー山天文台に籠っていた。しかし、自分の想定とは異なり、見つかるはずの星が見えないことを怪訝に思っていた。
よりよい性能の望遠鏡を使えども、結果は同じ。そして仮説と検証を繰り返す中で彼が辿り着いたのは、「ハッブルの計算に誤差がある」というものだった。
星雲までの距離は、セファイドと呼ばれる変光星の明度を基に算出していたのだが、本来は別々の種類のそれらを混同して計算した結果、実際より近くなったのだという。
計算上の距離が実際より近いとは、つまり本物はもっと遥か彼方にあるということだ。そして出された結論として、宇宙の年齢が、それまでの倍に延びることとなった。
これは、地球の方が宇宙より古いという矛盾を、完全にクリアし得る発見と修正であり、ビッグバンモデルに強い追い風が吹き始めた瞬間であった。
5月11日(水) 旧世代
宇宙の年齢が倍に延びる。これは、ビッグバンモデルにおける追い風となった。皮肉なことに、その発表の場の書記は、定常宇宙モデルのホイル氏だったという。
彼は慎重に、決してビッグバンという言葉を登場させず、また連想もさせないような言い回しで、その日のことを書き留めたそうだ。
だが、それ以上に打ちのめされた人もいた。エドウィン・ハッブルその人だ。もちろん消えない名声・実績を既に得ている人なのだが、己のミスを指摘されたのと同じ。
彼のフラストレーションは、ノーベル物理学賞を長年得られなかったことも相まって、この頃にはかなりのものになっていたという。
しかしそんな彼にも、アンドロメダ星雲を巡る論争の決着、赤方偏移の発見などの功績から、ノーベル賞の授与が秘密裏に検討されていたことがあったという。
不運にも、その選考の間に、ハッブル氏は病死してしまっていたのだ。こういうあと一歩で・・的な話、リーヴィット氏のケースにもあったなぁ。
だからこそ後世に語られる伝説になっている部分はあるだろうが、色々ともやもやする話ではある。
5月12日(木) アップデートを繰り返す
バーデが宇宙の年齢を再計算によって倍にした2年後、その弟子にあたる学生が改めて計算に矛盾を発見し、さらにその年齢を伸ばすこととなった。
気付けばあれよあれよと宇宙の年齢は伸び続け、気付けば今や138億年といわれている状態だ。これにて、地球より宇宙の方が若いという矛盾は、完全に霧散した。
もちろん矛盾が解消されたことはつまりビッグバンが証明されたなんてことにはならないのだが、流れが段々傾き始めたのもまた事実である。
ー余談だが、論を巡ってはバチバチだった両陣営の人たちだが、個人的な付き合いとしてはそうでもなかったという。
ホイルはルメートルのことを「めっちゃいいひと」と評していたし、ガモフとドライブして、ランチを共にしたこともあったという。
ガモフは昼間っからワインを仰ぎ、後部座席で寝て、ひどい頭痛で目覚めるのが常だったのだという。なんというか、平和な世界である。
5月13日(金) 解かれゆくギャップ
宇宙の年齢以外の、ビッグバンモデルの矛盾点。それは、宇宙誕生の瞬間の温度や時間を仮定すると、あんなに多種多様な元素は生まれないという試算であった。
水素やヘリウムといった軽いものは説明がつくのだが、それ以上のいわゆる重たい元素となれば、それらが合成・生成される条件が存在しないように思えたのだ。
この問題に対し、ある種の答えを示したのは、意外な人物であった。そう、ホイルである。
彼はこの問題を、どちらのモデルとか関係なく、取り組むべき課題だと認識していたらしい。
ヒントとなったのは、星の終焉についてだ。夜空の星は光輝いているが、それは内部にあるエネルギーを燃焼させている結果である。
それが尽きれば、星は収縮し始める。するとある程度のところで、再び内部から押し返す力によって、安定する。風船を想像したら、この辺はわかりやすいかも。
そのそれぞれの安定ポイントで、星が維持する温度や圧力は当然変わる。すると、多種多様な元素が誕生するのに必要な条件は、これでクリアできそうなのだ。
頭が爆発しそうな話だが、頑張ってついていきたいと思う。
5月14日(土) 最後のピース
ホイルの理論と説明で、宇宙の元素の比率は解決された・・・わけではない。ガモフ達も諦めた超難問が、まだそこに潜んでいたのだ。
それは、「いかにして炭素が合成されるのか?」というプロセスである。水素からヘリウムにはなれるのに、そこから先が袋小路なのだ。
超ミクロの物質が3つ同時に衝突するか、超短時間で崩壊する元素が誕生した瞬間に、別のそれが激突するかしか、炭素が生まれそうなケースはないのだという。
この天文学的に低い確率のせいで、ガモフは自分の理論を構築しきれなかった側面があるのだが、ホイルはそこに、画期的な抜け道を作ろうとしたのだという。
その話については、明日登場するらしいので、気長に待とうと思う。
5月15日(日) 未知を創造する
ホイル氏が閃いたウルトラCとは、「炭素が生まれるためには、こういう現象や存在が無ければならないはず」という仮説そのものだ。
そこに至るまでのプロセスは、まさに三段論法をいくつも重ねるような思考である。
実際に俺の身体には炭素が含まれている、そして元素は全て宇宙由来なのだから、思考実験で無理だろうが、炭素は絶対に生まれていると彼は考えたようなのだ。
ではそのためにはどうすればいいかを考え続けたところ、観測されていない未知の現象があると仮定すれば、その限りではないという発想に至ったようである。
目の前の事象を説明するために、既存の現象を積み重ねるのではなく、全く新しい案を捻出する。これこそまさに、永遠の子供が成せる所業だと思う。
となればホイルの仕事はたった一つだ。実際にそれを確認すればいい。いよいよ、ミクロ極まる世界に潜む問題に、光明が差し込もうとしている。
―ってところで、今週はこの辺で。