かなり作り込んだ授業を発表する場が終わった翌日、燃え尽き気味のメンタルに驚いている中元です。
はい。段々と終わりが見えてきていることは間違いないのだが、なかなかそれの手触り感を得られない今日この頃。内容が面白くなければとっくに投げているところだ。
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しかし不思議なもので、こうも化学という学問に、かくも熱量を注げる存在を見せつけられると、それを勉強したくなってきた自分に驚いている。文系なのに。
まぁそれはさておき、以下続きである。
- 5月16日(月) 理系式論破術
- 5月17日(火) 才能が潰されるとき
- 5月18日(水) パトロン
- 5月19日(木) 宇宙からの贈り物
- 5月20日(金) Serendipity
- 5月21日(土) 続・Serendipity
- 5月22日(日) 不可視を可視化する
5月16日(月) 理系式論破術
既知の理論で説明がつかないなら、未知の現象がそこにあるはずだと仮定したホイルは、さっそくそれを実験するチャンスを得た。
サバティカル(ある種の長期休暇)を利用し、プリンストン大学のジョン・ホイーラー氏を訪ねたのだ。(もちろん大家)
当初は「謎の若造が変なこと言ってらぁ」程度にしか考えていなかったホイーラー氏はホイルを邪険に扱ったようだが、ホイルは食い下がった。
「実験がスカっても、数日間ちょっと残業すればペイできます。しかし成功すれば、あなたは不朽の名声を得られるんですよ?」
ーというローリスクハイリターンを強調し、ホイルはその実験を行う機会を得た。その値は驚愕だった。
前人未到、未知の現象の予言のみならず、発見してみれば、その数値までもドンピシャで言い当てていたのだ。
これにより、なぜ現在の比率で元素が宇宙に散らばっているのかを説明する論拠が、ついに示されたことになる。彼の発見は、偉人級だ。
このとんでもない予測に対し、ガモフは神に対するそれと同じくらいのリスペクトを、ホイルに捧げたという。
両モデルの垣根を超えた偉業が、まさになされた瞬間であった。
5月17日(火) 才能が潰されるとき
ノーベル物理学賞レベルの発見を成し遂げたホイルであったが、それが授与されたのはホイーラー教授だったという。なぜ彼は、選考から漏れたのか?
それは、歯に衣着せぬ物言いが原因で、科学の界隈における権力者に対し、敵が多かったからだといわれている。
その後彼は、大学内のこれまた権力闘争に巻き込まれ、辟易し、そして遂には不満が爆発した結果、教授職を辞すまでに至っている。
才能が潰されるとき、その原因も背景も似通っている。本当にそう思わされる。ちなみに彼はその後30年に渡り、ある種フリーランスの研究者として過ごしたそうだ。
彼を慕う人間は敵以上に多かったというから、晩年は悪くない研究者人生であったことを、願わずにはいられなく思う。
5月18日(水) パトロン
研究者がどうやっておカネの支援を得るかは、意外な盲点というか、気付きこそすれ、思い馳せることが少ないポイントだと思う。
例えばビッグバンモデルが正しいとされたとして、それによってどんないいことがあるのかというのは、ビジネス目線で考えれば色々と難しい点である。
そういう問題に対し、コペルニクスやケプラーは別の教職で埋め合わせをし、ハーディは強力な支援者の資金提供を受けてペイしていたそうだ。
つまり、自分で副業をして稼ぐか、莫大な財産を持つ人と仲良くなって支援を得るかの2つに1つという感じだったらしい。これは納得。
そして近代、ついにそういった研究を、企業として取り組むという新しいスタイルの組織が登場したのだという。
まだそこから先は読めていないのだが、経済学部出身の僕の琴線に触れるテーマである。楽しみにしたいと思う。
5月19日(木) 宇宙からの贈り物
1920年代のアメリカでは、ラジオが巨大な市場だったのだという。各地に線を繋ぎ、番組を作り、放送する。利用料は高額だったが、利用者は多かったそうだ。
ただ、あくまで新興の技術であるため、例えば放送中にノイズがやたら発生するといった粗悪なところは多々あった。
逆に言えば、そこを改善できた会社が、実質的に市場を独占できるともいえるのだ。そこでこの研究に乗り出したのが、大学を出たばかりほやほやのペンジアス氏だった。
建造された巨大なアンテナを用いて、ノイズの原因を探るうち、彼はそれが3つに細分されることを発見した。アメリカ内の嵐、国外の嵐、そして原因不明である。
原因不明のノイズは、周期的にピークが来ることがわかった。そのピークは、地球上における1日(≒24h)ごとにくることを、ペンジアスは発見したのだ。
彼は、同じ研究所のウィルソンと協力し、このノイズの分析を調べることに決めた。これは無視しても差し支えない些細なノイズではあるのだが・・・。
ここを無視せずに取り組んだ二人により、ある決定的な発見がなされることになるのであった。
5月20日(金) Serendipity
今日読んだところは【serendipity】がテーマであった。今まで読んできた単語帳に全く心当たりがないので調べてみると、定義が超絶長い造語?であった。
セレンディピティ◆別のものを探しているときに、偶然に素晴らしい幸運に巡り合ったり、素晴らしいものを発見したりすることのできる、その人の持つ才能。◆
【語源】
例えばマジックテープの発見は、偶然ズボンにくっ付いたオナモミか何かだし、ポストイットの発明は、糊の失敗作という逸話がある。
日々些細なことに対してもアンテナを張ることを説くビジネス書は多いが、その理由の1つにはセレンディピィティをきちんとキャッチすることもあるだろう。
アイスプラネットのぐうちゃんみたく、「不思議アタマ」にした状態で世の中を見れば、セレンディピティを狙って起こせる場面も増やせるのではなかろうか。
日々インプットを、ジャンルについて好き嫌いせず継続しよう。改めてそう思った。てか超軽い二日酔いのため、ほぼ読めなかったというだけなんですけどね。
5月21日(土) 続・Serendipity
セレンディピティの例は続いた。例えば、第二次世界大戦中にレーダ―装置に入っていたノイズの正体もそうだ。
最初はドイツ軍によるジャミングと思われたが、その規則性や発生頻度を調査すると、太陽が原因と結論づけるしかなかったという。
すると結果、太陽と、おそらく他の星も、音波を放っていることがわかり、天文学に貢献することになったのだ。
とはいえ、これら全てを「運がよかった」という言葉で総括するのも愚かだ。セレンディピティは、日頃から準備に余念がない人に降りそそぐ幸運という方が正確である。
もし、オナモミの種をイライラしながら払いのけていたら?もし、失敗した糊を検証することなくシンクに捨てていたら?
常日頃から学びを深めるだけでなく、偶然を愛でるというか、「へぇ、面白い」と思えるくらいの度量も問われる、不思議な話だと改めて感じた。
5月22日(日) 不可視を可視化する
電波や音波を研究することで、望遠鏡では見ることのできない星の存在を感知する。第二次世界大戦で磨かれた軍事技術は、天文学に転用され始めた。
これにより、前時代からの宿題になっていた諸問題も、次から次へと観測によって解決される場面が増えたようだ。例えば、銀河の分布などもそうである。
新技術により、人類の目はさらに遠くの世界に対し開かれるようになった。限界を感じたところから、さらに飛躍を繰り返す。限界という言葉を嘲笑うかのように。
いよいよ天文学に関する話も、近現代に突入し始めるのであった。
では今週はこの辺で。