いよいよ公立高校入試の日取りが迫ってきた。ざっくり本番まで4週間ほどであり、残り30日を切ったという現実からか、浮足立つ受験生は多い。
ゆえにこのシーズンに入ると、単元そのものの指導に加え、生徒の力量を客観的に見てつぶさにコーチングしていくことも、こちらの大きな仕事となってくる。
―では、この直前期は、何を意識して学習に取り組めばいいのだろうか?現実問題、ここから10点~15点も伸びることは望めない。それを認識したうえで、何をすべきか。
今日はそんな話を考えていこう。
淡々と、本番に合わせていく。
受験とは”本番で”他の受験生より点を取ったヤツが合格する世界である。正直言えば、それまでの模試や過去問演習で何点取ってきたかは、あまり関係が無い。
そして”本番”とは何かを分解していくと、実はそこに、様々なルールや制約があることが見えてくる。
例えば、公立高校入試の時間割は、科目の順番含めて既に決まっている。会場入りする時間も決まっているし、試験は絶対に朝から始まる。
自分一人だけ別室で、静寂の中受験をすることは許されず、周りの人間から圧を掛けられ続けながら、5科目連続で問題に挑むこととなる。
・・・こんなわかり切った話を何故書いたか?思うに、これを意識的に日頃から再現している生徒など、ほぼ居ないからだ。
そしてこのことの何が問題かと言うと、本番に弱いコンディションに仕上がってしまう可能性が高くなってしまうのだ。
日頃から夜更かしして勉強し続けた生徒が、いきなり本番、朝に最高のパフォーマンスが出せるかどうか?考えたら即、ダウトだとわかる。
そういう本番と乖離した要素を発見し、指摘し、そして生徒の学習習慣から除外していくか。今年強く僕が心掛けているのは、まさにこの点である。
人より高い点を取ったかどうかだけが問われる世界。
冷静に考えてほしいのだが、入試とは他の人より高い点を取ったかどうかが問われる世界である。つまり、難問を1つ解くより、小問を3つ解く方が、評価が高いのだ。
特に数学が顕著だと思うのだが、大問1、2,3・・と順番に挑んでいって、大問5以降は辿り着くことすらできずに終了というケースは、多いどころか一般的だろう。
実際に試したことがあるのだが、例えば相似・合同の証明やめんどくさい確率の計算を完全に無視して、ひたすら他のを解いた方が、総合点が高いこともある。
何が言いたいかと言うと、自分なりに一番得点が高いやり方について、日頃の演習の中で探り、試し続けるべきだという提案である。
だから僕は最近、過去問演習の時間の度、生徒に対し必ず「テーマ」を設定するよう、口酸っぱく伝えている。
今回は、50文字以上の記述を一旦無視しよう。今回は、古文・漢文からやってみよう。いっそ、作文から書くのはどうか。といった風に。
高校受験や大学二次試験など、マークシートではない解答用紙であれば、解く順番を変えても解答欄をミスるというリスクは少ない。
それはつまり、作戦の数もたくさん存在するということだ。厳しい話だが、やはり20分考えて3点の問題を1つ解いても、「だからなに?」なのである。
終わりに:合格点を取る実力がある人が、ちゃんと合格点を出してくるような調整を。
先日、「試験本番に強くなるメンタルスキル」という面白い記事を読んだ。
そしてその中の1つに、ちょっと傲慢かもしれないが、すごく同意する部分があったので紹介する。それは、こんな一節だ。
例えば、受験であれば「試験に合格すれば学校に入れる」と考えるでしょうし、資格試験であれば「試験に合格すれば資格がもらえる」と考えるでしょうが、損失回避傾向が強い人はこの目標の考え方が危険です。
考え方としては、自分はすでに資格を持っていて、「これから受けるテストは、その資格を維持するためのテストだ」と考えてください。
何かを手に入れる試験ではなく、持っているものを維持するための試験だと考えることによって、本番での実際のパフォーマンスが上がり、緊張感を味方につけることができたという結果が示されています。
―つまり、合格する生徒は、前提としてそもそもその力量があるということである。合不合を分けるのは、本番でそれが出せるかどうか。ただそれだけのことが多い。
力量的に不十分だと感じる生徒が一か八かで突っ込んで合格した例を、僕はほぼ知らない。よく喧伝されるE判定からの合格例など、身近では1件しか見たことが無い。
ただ逆に、力量的には十分な生徒が涙を飲む例は、毎年2~3件は悲しいが、ある。「本番には魔物がいる」とは言われるが、まさにそのものの例だと感じる。
そんな「魔物」も、事前の調整次第で弱体化させたり、場合によっては完全に消したりすることもできるわけで。そのことが伝わっていたら嬉しい。
ということで誰に向けた記事が結構ふわふわしたけど、今日はこの辺で。