精神年齢9歳講師のブログ

日々を自由研究の如く生きたい。

通塾を「おことわり」した後の胸の内。 ―やったことと感じること―

曲がりなりにも組織(校舎)を預かる身となった以上、いずれから見れば「ひどい」と言われる決断を取らねばならぬ時が来ると、覚悟はしていたつもりだった。

 

しかし実際にその場面となると、心はブレるし、胃は重いし、心臓の鼓動は強くなった。僕の軽薄な覚悟など、無いに等しい脆弱さだったのだ。

 

―具体的に何があったかというと、通塾をおことわりしたのだ。

 

これは入塾前の段階ではなく、しばらくお通い頂いたご家庭に対して告げたものだ。将棋で言えば一手詰みの段階まで、最後の最後まで粘ったのだが、どうにもならず・・。

 

実際昨日は本当に大変で、心身に強い悪影響がずっと出ていた。酒を飲んで憂さを晴らし、二日酔い上等で潰れた結果、朝日で目覚め、今に至る。

 

時間とは偉大なものだ。時が経つにつれて少しずつ、心身が軽くなってきたのだから。今なら落ち着いて、正直な気持ちを言葉にできるかもしれない。

 

今日はそんな一つのケジメとして、記事を書いていく。ついでに、僕の採った手段が、巡り巡って誰かの役に立てばいいなと思いながら。

 

ではいこう。

 

 

きっかけはなにか。そして僕はどうしたか。

 

おことわりのきっかけ。それは、言ってしまえば素行不良だ。具体的な言動を書くことは憚られるので、抽象的に様子を書いておく。

 

変だなと思ったのは取り組む課題の難度が上がって、しばらく経ってからのことだ。問題を間違えることが増えるのに比例し、その子の感情が荒れやすくなった。

 

最初は全身の脱力で済んでいたが、それは叫び、脱走、ちょっかいへとエスカレートし、最終的には指導に対しキレる状況にまでなってしまった。

 

だから、窮状の訴えが、否が応でも僕に集まる。指導が困難、周りへの影響が心配、等々。このままでは・・・という思いは何度もよぎった。

 

まず僕が採った手段。それはこのブログでも何度かまとめたことから察されるかもしれないが、発達障害に関する勉強だ。

 

診断が出ているという話は聞いていない。だが、疑いたくなるほど、その様子は気になった。だから調べた。こちらができることは、全てやりたいから。

 

―それでも様子は沈静化せず、校舎全体に疲労が溜まっているのを僕は感じ取った。告げなければならない。だからその様子を、口頭で伝えた。

 

言葉を選びながらだったので、訥々としたものになってしまったが、その場で現状の連絡は一応完了することができた。

 

確かに、一旦の改善はみられた。このまま精神が成長していけば、落ち着く。そうも思えたのだが・・・。

 

後に引けなくなったのは、講師からSOSが出たためだ。教えれば反抗され、叱れば癇癪を起こす。どうしたらいいか。

 

そう僕に訴える電話の向こうの声は、かなり弱っていた。

 

・・・そしてその現場を、別の日に僕も見てしまった。だから呼び出して、真面目な話をしようとした。

 

しかし一切耳を貸してもらえず、その子は無邪気に、目に映る小物やアニメのキャラの技名を、ただただ僕に喋るだけであった。

 

―その後はご察しの通り。上記のやり取りをまとめて、再度伝えて、結果として「おことわり」に至ったのだ。

 

電話を掛けるまで、心臓が凄く重かった。皆は胃が重くなるというが、僕の場合はもう少し上に、鈍い感じを覚えるようである。

 

そしてやり取りを終えた後に感じたのは、猛烈な無力感と罪悪感、そして脆い自己肯定のスイングである。

 

もっと良い未来があったのでは、とも思う。でも同時に、僕の決断は合理的に間違っていない、とも思う。その揺れ動きで、ほとほと疲れ果ててしまった。

 

そのご家庭は僕を恨むだろうか。少なくとも好意的には思うまい。だが嫌われたとして、それも無理はない一方的な提案を差し上げた手前、受け入れるべき類のものだ。

 

そして僕の決断は正解なのだろうか。そんな答えなど、未来永劫わかるわけがない。しかし確実に、放置すれば、校舎運営が終わっていたとも思う。

 

飲み込めない感情の渦。それを無理矢理酒で飲みこんで、僕は眠りに落ちた。いつ頃寝たのかさえ、思い出せない。

 

次の日、起きてみれば空は驚くほど快晴だった。しかし、なんというか・・胸のつっかえが取れたというレベルではなく、胸に穴が空いたような感覚は続いていた

 

文化祭の次の日。受験が終わった次の日。告白してフラれた次の日。そのそれぞれで抱いた思いと同じものを、僕はそこに感じ取っている。

 

―ということで、僕の中ではまだ、今回の決断が良かったか悪かったか、それは全く検証に至っていない。あまりにも期間が短すぎるからだ。

 

推敲もせずに書き殴ってみた。これがまぁ、ある意味非情ともいえることを告げた後の、ひよっ子リーダーの胸の内、という感じである。

 

下手すればこれくらい自分にダメージが跳ね返ることもある。そこは覚悟したうえで、自分のコミュニティに合わない人に、そう告げよう。

 

気軽に伝えていいものではないのだ。

 

どうしても告げなければならないあなたへ。

 

今回の一件で僕が一番悩んだのは、先行例をネットの集合知に発見することができなかった、というところにある。

 

先輩方に話を聞いても、そういう対応をした例はほぼ無く、十分に作戦を練られたかというと、それはやはり怪しい。

 

だからここに、事務的な流れになるのだが、僕が採ったプロセスを書く。

 

まずはとにかく現状の把握に尽きる。例えば、僕の前だけ荒れるのか、他の特定の先生がいるときに荒れるのか、別の生徒との組み合わせで荒れるのか、そこを探るのだ。

 

色々な観点と仮説から様子を見てきたが、今回は人の相性ではなく、その子の性格と、問題に対するジレンマだと判断した。

 

そして同時に、席を離す、刺激が強い小道具などを片づける等、環境のハックで何とかできる部分は徹底的にそうした

 

ちなみに、その子当人への効果はほぼ無かったのだが、教室全体への影響としては、統率というか、その辺がかなり取りやすくなったように思う。

 

さて。このタイミングでいきなり保護者へ通告するのはよろしくない。だから一度、イエローカードのような温度で、現状を報告する場を設けた

 

そこでは特に結論を迫ることはなく、校舎での様子の報告と共有が目的だった。一旦これを入れておくと、それで改善が見られることもあるので、絶対にやるべきである。

 

・・・それでもどうにもならなかったため直接伝えることになったのだが、その際特に気をつけたことは、2点ある。

 

感情的にならないこと + 事実を淡々と伝えること

 

だ。これについては、習い事を辞めさせられたことについて禍根を残している保護者の方のブログを読んで、特に気をつけようと誓った部分である。

 

具体的な禁句としてはこんな感じ。

 

① 他の子に迷惑が掛かっています

② 先生方もどうしていいか困っています

③ 落ち着きが全くないですね

④ 検査は受けられたことはありますか?

⑤ 言うことを全然聞いてくれません

 

・・・いや、こんなこと言ったらダメだろと素人目でもわかりそうなフレーズだが、これを言われた例はそこそこ目立ち、その全てでその保護者は怒っていた。当然だ。

 

これらはすべて感情的故に出ているフレーズだ。だから僕は、あくまでも事実をベースに伝えると、改めてそれは自分の中で念押しした

 

やり取りが始まってまず僕がやったこと。それは最後の可能性の確認だ。例えば学校での素行は問題ないなら、単純に塾のコンテンツが合っていない。

 

あるいは、実は学校からもそういう連絡があるのなら、それは特性ゆえの話かもしれない。不足しているピースを、まずは冒頭で確認したのだ。

 

その上で、集めていた情報をメモに書き出しておき、それを読むという形で伝えた。これが一番、感情が入る余地が少ないと思ったためだ。

 

その後はもう、クロージングでおしまいである。時間にして15分くらいだったのだが、体感としては45分くらい緊張しっぱなしだったように思う。

 

終わりに。

 

ひろゆき氏の配信を観ていると、「基本的にどんな嫌なことも、二発目以降はダメ―ジが減る」という話が出てきた。

 

僕に関して言えば、このダメージには絶対強くなれないだろうなと、そう思うくらいしんどかった。

 

そこには、自分から他者に嫌われる、憎まれることをするということへの猛烈な抵抗と恐怖が隠れていると分析している。

 

―しかし、本当に人とは不思議だ。今日僕は、滞納が続くご家庭への催促状を作り、請求書を書いて封筒へ詰めて、あとは投函するだけという準備をした。

 

そこに抵抗は全くなかった。「払わんかい」という思いが強いので、嫌われても憎まれても死ぬほどどうでもいい。そう思ったとき、本当にハッとしたくらいだ。

 

辛い出来事を辛いと思い続けることは、それもそれで難しい。ずっと辛いのなら心の健康を損ねていると言うのなら、普通はその内しれっと忘れるものなのだろう。

 

実際、この記事を書き終えた今、頭にある唯一の思考は、「自分が好きな惣菜はまだスーパーに残っているかな」という俗的な欲望である。

 

最後は謎のメッセージになったが、1年後くらいにこの記事を読んだ僕が、「あー、あったねそんなこと」と鷹揚に笑ってくれることを願って止まない。

 

では今日はこの辺で。

 

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