サイモン・シン氏の文才は堀江貴文氏も絶賛するほどであったが、偉そうなの承知で言うと、僕も本当にそう思う。上手に言葉にできないが、とにかく読み易い。
具体的に内容をイメージしやすく、それゆえにぱっぱと情報が頭の中でまとまっていき、スピーディに読み進めることができている。
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そのテーマは正直難解で、数学や数的パズルの素養や興味が無ければアレルギー反応を起こすことは請け合いのはずなのに、最初から歴史に纏わる話なので、とても嬉しい。
ミステリーというものが好きな人であれば、全員例外なくこの話に面白みを見出せるのではないかと思う。ということで以下、読書感想文をまたまとめていく。
- 7月22日(月) ぼくらはみんな、暗号作成家。
- 7月23日(火) カエサル暗号。
- 7月24日(水) 古代の暗号だろうが、今でも解読が困難。
- 7月25日(木) ”解く”プロたち。
- 7月26日(金) 代数と暗号。
- 7月27日(土) 統計学的手法と暗号。
- 7月28日(日) 「実際にやってみた」
7月22日(月) ぼくらはみんな、暗号作成家。
子供の頃、かいけつゾロリか何かの影響で、よく友達向けに暗号を作って遊んでいた。
例えば行頭だけを読む、別の文字に置き換える、あるいは順番をランダムに組み替える、等々。
そういった子供が思い付くタイプの暗号は、実は原始的なそれであることを知った。昔はそれが軍事作戦に使われていたのだ!
伝えたい文字列を交互に並び替えたり、ある特定の直径の巻物に巻き付けないと解読できなかったり。
初期の頃に大切だったのは、数学力より遊び心かもしれないという仮説は、とても面白いと思わされる。
7月23日(火) カエサル暗号。
かの指導者カエサルも、特殊な暗号を用いていた痕跡があるという。それはいわば「ずらし読み」だ。
例えば本来は「a」である単語を「b」に置き換えて暗号化する感じだ。まぁ、1文字ずらしただけだと、大抵はすぐにばれるのだが。
仕組み自体はとても簡単な話だが、総文字数が増えると簡単に、チェックに要する時間が宇宙の年齢を超えてくるのだという。
暗号を解く側には膨大な練習と教育が必要なのに、作成側にはさして教育が要らないのはなんとも面白い。
7月24日(水) 古代の暗号だろうが、今でも解読が困難。
AIが台頭したことにより、人間の限界をはるかに超える水準・物量・作業量で暗号解読に乗り出せるようになってから久しい。
特に古代の暗号なんてのはとてもシンプルなものなのだから、今まで読めなかったものもゴリゴリと解読できてくるに違いない!・・という予測は、あまりにも楽観的だろう。
古代だろうが、暗号は暗号。その解読難度は極めて高く、例えば紀元前の文字と思われる記号の羅列も、意味をそこから読み取るまでには一切至れてないくらいである。
古代人が残したメッセージはなんなのか。僕らがそれを知ることは、もう無いのかもしれない。確かに遺ってはいるのだが、内容は永遠に葬られたかもしれないのだ。
7月25日(木) ”解く”プロたち。
暗号を作ることは割と広範囲で、世界同時的に発生した技術なり考え方なり、とされる。
しかしそれを打ち破る方法を本格的に考案したとなれば、その功績はアラビア辺りになるそうだ。
それこそ代数を用いた計算など、そもそもアルゴリズムや記号に強い人達というイメージはそのエリアに多いという印象を、確かに僕も持っている。
だが暗号化ではなく、それを解読する側としても相当の功績を歴史に残したというのは、やはり驚きだ。中東を語らずして、数学は語れないのだと、改めて思えた。
7月26日(金) 代数と暗号。
唯一神を崇めるイスラム圏にとっては、その言葉が本当に資格ある者、すなわち神からのものなのかは、とても大事なことだ。
とはいえ、だからといって一定のテキストからその辺りの真贋を判断できる手法を創ってしまうのだから、太古のイスラム圏の人の情熱と数学力には頭が上がらない。
その手法はシンプルで、使用頻度が高い文字を、暗号文の中で使用頻度が高い記号に代入してみる、というものだ。
当時は置き換えによる暗号が主流だったため、これでも十分すぎる効力はあったそうである。
7月27日(土) 統計学的手法と暗号。
ひた隠しにしたい文章を打ち破る術ができたことは、つまり暗号というものがまた劇的に進化するきっかけができたということに等しい。
数学で用いられるテクニックと推論の力が活路を開いた以上、暗号を作成する側もまた、数学を用いてそれを強固なものに変えられるのではないか。
僕が聞いたことのあるエニグマだのなんだのの話は、今語られている時代から数百年飛んだ後の世界のそれなのだが、既にその端緒は見えている。
それでいて、難解なテーマにも関わらず非常に読み易い文体が、僕を後押ししてくれる。洋書の面白さを、今はしっかりと実感できている。
7月28日(日) 「実際にやってみた」
今日のページを見て驚いた。段落1つ丸ごとを使って、実際に「置き換え」による暗号があったためだ。そしてそれを、プロセスに沿って解読してみせる、と。
使われている言語が英語で、かつ置き換えによる暗号だと仮定すれば、英語における再頻出のアルファベットと、暗号で再頻出のそれは、概ね一致するはずだ。
そしてそれぞれが母音なのか子音なのかも、一定の傾向が存在する以上、それもまた一つの解読の突破口になり得る。
ちなみに英語圏におけるもっとも使用頻度が高いアルファベットは「e」らしいのだが、同時にそれが全く使われていない本も、この世には存在するのだという。
暗号関係ないのだが、狂気を感じる作品だと思う。可能であれば読んでみたいと思う。
では今週はこの辺で。