大学受験の勉強においては、精読も勿論効果的だが、とにかく膨大な文章に触れて英文自体を読む経験をたくさん積んでおくことが必須だとされる。
それ自体僕もそうだと思うのだが、文章として秀でているものであれば猶の事その効果は高いと感じられる。この本は、英語だが本として秀でていると僕は感じている。
jukukoshinohibi.hatenadiary.com
どうしてこんなにスルスルと内容を理解できるのだろうか。これまで読んできたどの本よりも、正直言って読み易さと満足度が高いのが、サイモン・シン氏の技のようだ。
この本を読みながら、暗号の歴史だけでなく、英語における読み易さについて、何か秘密に辿り着けることを願って止まない。では以下、本題である。
- 7月29日(月) 疑似・暗号解読。
- 7月30日(火) 暗黒時代。
- 7月31日(水) 暗号の黄金時代。
- 8月1日(木) 水面下で伝わる何か。
- 8月2日(金) 開闢の暗号。
- 8月3日(土) 英国乱世。
- 8月4日(日) 動乱の運命。
7月29日(月) 疑似・暗号解読。
「とりあえずやってみる」ことの大事さは、暗号でも通じるらしい。
置き換え暗号の規則性を確認すると、大腿は「おそらくこの文字は、このアルファベットを示している」といった仮説が立つ。そして一旦、思考は止めるのだ。
その規則をとりあえず代入し、経過を観察する。そうすると、新しい規則が見えて、更新された説が立つのだ。
失敗を許容できない人が勉学に向いていないのは、この「試し打ち」ができないからだとよくいわれる。
耳が痛い話だが、僕もまだまだプライドが不必要に高い側であることを、きちんと意識したいと思う。
7月30日(火) 暗黒時代。
中東が数学や暗号の研究を花開かせていた一方、ヨーロッパはある意味文化的に暗黒時代だった。
教会の権力が絶頂期であり、聖書にあることが全てとされた時代。異端というレッテルを貼られれば、あらゆる知の探求は阻害、時には迫害される。
それゆえに、筆者はこの時代を暗黒時代と呼んでいたが、それはその通りだと思う。
ルネサンスが大きな意味を持つのは、ヨーロッパを覆っていたそれまでの闇が晴れたためだと今なら解る。
そしてそれを期に、暗号もまたその性質と難解さを変えていくことになるのである。
7月31日(水) 暗号の黄金時代。
中世に入りルネサンスの時代になる頃には、ヨーロッパ各地で「帝国」といった概念が登場するようになる。つまり、国家と国家の関係というものが誕生したのだ。
他国に対し有利に立つため、或いは協定を結ぶため、或いは戦争を仕掛けるため、外交という概念も生まれ、それを専門にする人も誕生した。
その情報はまさに秘匿されるべきものであり、また敵からすれば、喉から手が出るほど知りたい情報であると言える。
すると出番が来るのが、「暗号」だ。絶対に打ち破られないそれを作るか、それともその鍵を破壊して中身を知るか。
熾烈な戦いは、静かにまた、始まろうとしているのであった。
8月1日(木) 水面下で伝わる何か。
スペインが中世ヨーロッパで隆盛を極めたのち、衰退に向かっていってしまった要因は、色々と議論が行われている。
実はフェリペ2世の頃には、スペイン自体が暗号に振り回され、外交上の出遅れのようなものに苦しんでいたらしい。
この頃になると単なるアルファベットの置き換えから進化して、意味のなさない文字を加えたり、複数のアルファベットをひとつの記号に置き換えたりしていたらしい。
いわゆる漢文でいう置き字であり、太古の文字である象形文字への先祖返りという話だろうか。そう思うと、なんとなく味わい深さを覚える。
8月2日(金) 開闢の暗号。
暗号解読の初期は、実はかなり脳筋的なやり方だったという。ある程度まで置き換え等で絞り、そこからは推測で一気に進めるのだ。
推論の上に推論をどんどん積み上げるという危うさはあるが、そちらの方が何かしらのメッセージ至る可能性は逆に高いような印象も持つ。
そういえば50年以上解読できなかったゾディアック暗号が近年解読されたのだが、似た手法を使って解読していたように記憶している。
始まりにして、最強レベルの武器のひとつ。厨二臭いが、なんともかっこいい響きである。
8月3日(土) 英国乱世。
時代は急に変わり、舞台は中世のイングランド。何かと話題に事欠かないヘンリー8世が国王だった時代の話だ。
この頃は国家間の関係・緊張がバチバチの頃であり、例えば政略結婚から謀略まで、蜘蛛の巣の如く張り巡らされていた時期でもある。
その中でも特にカオスだったと僕が思うのは、イギリスとフランスを取り巻く緊張関係で、その渦中にいた人こそがヘンリー8世その人なのである。
宗教的違い、国家間の思惑、そして君主の力量。全てがせめぎ合って火花が散っていた時代に暗号が果たした役割は何か。
置いていかれないよう、しっかり読みたいと思っている。
8月4日(日) 動乱の運命。
仕方ないの一言で片付けるのも悲しい話だが、当時はやはり医療の進歩も未成熟で、現代なら容易に救えるであろう命も、悲惨な苦しみの果てに失うことが多かったそうだ。
スコットランドのメアリー王女も、生まれてすぐに定められた夫ときちんと結婚をしたのち、なんと1年くらいで未亡人になってしまったという。
悲しみに浸る間もなく、彼女には次の夫が用意されたが、その人はまた暴君のような気質であり、誰が指示したかは不透明なものの、つまり暗殺をされてしまう。
国内外の動乱に翻弄されたメアリーは、同じメアリーの名を持つ王女が統治するイングランドを最後の頼みとして、国を脱出し、そこへ向かうのであった。
―という話。暗号は関係ないのだが、世界史としてすごく好きな流れである。
では今週はこの辺で。