暗号という言葉を聞くと、史実の前に様々なエンタメ作品を思い出す。僕の場合は何故かルパン三世がそれだ。具体的なエピソード名は出てこない。
どこかスパイというか、そういった要素があるエンタメに、暗号は欠かせない。それを解いた先に待つ秘密自体にも、解読のプロセスにも、心が躍って仕方がない。
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だから今でも、ヴォイニッチ手稿とか線文字Aとかビール暗号とかゾディアック暗号とかは、純粋な心を持つ人たちのそれを握りしめて離さないのだろう。
僕もまたその一人。シンプルに文章自体が面白いこの本を通じ、また一つ暗号の面白くも深淵なる世界へ、旅立っていきたいと思う。
- 8月5日(月) メアリーの悲哀。
- 8月6日(火) メアリーの希望。
- 8月7日(水) 二重の陰謀。
- 8月8日(木) トラップ。
- 8月9日(金) 勝者。
- 8月10日(土) 第二部。
- 8月11日(日) IFストーリーの可能性。
8月5日(月) メアリーの悲哀。
支援を得られると思っていたメアリーを待っていたのは、まさかの投獄であった。地位を脅かしかねない存在として、時の女王エリザベスは、彼女の幽閉を選んだのだ。
そもそもエリザベス女王自体、実は王位の正当性が危ういという弱点を持っていた。(母親アン・ブーリンの結婚自体が無効か有効かがかなりもめたように)
一方その点、スコットランドのメアリー女王の方が、血筋としては妥当(エリザベスより実は皇位継承権が高いともいえる)という背景があった。
一人息子と慣れ親しんだ土地から引き離され、異国にて失意の中幽閉されるメアリー。そこへどう暗号が絡んでくるか、今のところ兆しのようなものは見えてこない。
8月6日(火) メアリーの希望。
ときを同じくして、メアリー自身は与り知らぬ話だったのだが、密かに彼女を奪還し、革命のようなものを起こそうという動きが起きていた。
しかし、その陰謀を知る大使がイングランドに到着してみれば、そこには大量に積み上げられた手紙の山が残されていた。
これはつまり、メアリーに対するそれも無工夫では届かないし、また外へ手紙を出すことも叶わないという現実に他ならない。
そこで一計が案じられた。樽の栓を手紙に置き換えることで、遂に獄中のメアリーへ、奪還計画のあらましを届けることができたのだ。
ここからいよいよ、暗号が秘密裡に効果を発揮し始める・・のかもしれない。
8月7日(水) 二重の陰謀。
処世術と言えば仕方なくも思えるが、メアリーの内通者には裏切り者が混ざっていたそうだ。その者は情報をエリザベス女王側に流し、陰謀を筒抜けにしていたのだ。
だがその陰謀の計画は完全に暗号化されており、アルゴリズムを知らなければ解読が不能という代物だった。そこで誕生したのが、暗号解読のための組織である。
陰謀の中に隠れた裏切りが、暗号を解読するためのテクニックを生むきっかけになる。現実は小説より奇なり。下手な物語よりよっぽど面白いから、不思議だと感じる。
8月8日(木) トラップ。
メアリーが一縷の望みを託した暗号は打ち破られ、挙げ句共謀者を炙り出すための罠としても使われた。
エリザベス側には、人の筆跡を完璧にコピーできるプロがいた。その能力を用いてメアリーを騙り、手紙を通じて相手の名を言わせたのだ。
そして連座したものは捉えられ、全ての望みと共に首を落とされたのだ。その命運はメアリーも同じ。
血にまみれた陰謀は、最後まで緋色に染まったまま終わるようであった。
8月9日(金) 勝者。
メアリーは裁判でも堂々としていた。自分と反逆者を繋ぐものは暗号で隠されている、だからそれを証明することはできない、と。
しかし当時軍配が上がったのは、暗号解読の技術の方であった。メアリーの陰謀の証拠こそ証明され、彼女は斬首が決められた。
血の繋がりのある人間を処すことに抵抗のあったエリザベス女王も遂に署名を施し、彼女の刑は執行された。
暗号1つで数多の人間の命運が大きく変わる。世界がそれに気付いたのは、このときなのかもしれない。
8月10日(土) 第二部。
メアリーの一件は、ただメッセージを別の記号に置き換えただけの、いわば最初の暗号の完敗を告げるものであった。
暗号作成者は絶えず解読されるリスクを考えねばならず、そして状況は不利であることも認識する必要がある、と。
必要性こそが飛躍的進歩を生むことがある。ここから暗号は、さらに難易度を激しく高め、歴史に度々登場するようになるのである。
その後についてはどうなるか。展開はある程度読めるのだが、敢えてそこには触れずに、純粋な心持で楽しみにしようと思う。
8月11日(日) IFストーリーの可能性。
メアリーの暗号解読と処刑が行われた頃と時を同じくして、実は更に堅牢な暗号が開発されていたという。
カエサル暗号を更に複雑に組み合わせたそれは、例えば同じアルファベットも、別々の記号で出力する。
キーワードの共有というリスク自体はあるのだが、いわゆる統計による手法が通じにくいため、秘匿性はとても高い。
もしメアリーの一派がこの暗号を知っていればと、筆者もIfストーリーを考えていた。
おそらく彼女の命は少なくとももう少し護られ、歴史が変わっていた可能性が高い。ラノベにありそうな展開だと言える。
では今週はこの辺で。