暗号一つで、数多の人間の命運が決まる。メアリーオブスコットランドの一連の話は、その事実の凄まじさを、静かに僕に教えてくれたように思う。
暗号の始まりは、作成する側の完敗で始まる。今の世の中を考えると、解かれていない暗号が目立つがため、とても意外な出だしに思えてならない。
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言ったか言わずか、僕は邦訳された【暗号解読】を10年以上前に読んだことがある。ただそのときは、素養が全く足りず、その面白さを十分には理解できなかった。
そこから年月が重なった今、僕は英語で読めているばかりか、内容の面白さを味わえている。自己の成長を確認する時間でもある今、すごく僕は充実している。
てことで今週もガツガツと始めていくことにしよう。
- 8月12日(月) 簡便でもありながら煩雑でもあるということ。
- 8月13日(火) シンギュラリティ始まる。
- 8月14日(水) 暗号部隊創設。
- 8月15日(木) 大暗号の解読。
- 8月16日(金) 「お前は誰だ?」
- 8月17日(土) Black Chamber
- 8月18日(日) Out-of-place artifacts
8月12日(月) 簡便でもありながら煩雑でもあるということ。
複数のルールを1つの暗号に適応するのは、あまりにも煩雑である故に流行らなかった。
そもそも読み手も解読できなければ意味はないし、また軍事作戦においては堅牢さと同時に、簡便さも大事な要素だったためだ。
そのため実際に用いられたのは、メアリーの暗号よりは強固だが、件の暗号よりは煩雑ではない、折衷案のようなものであった。
いわく、1つのアルファベットを複数の数値に置き換えながら暗号化する、と。
出来上がったそれを解読するのは素人目線でも不可能に思うのだが、実際は穴があるというから寒気がする。
8月13日(火) シンギュラリティ始まる。
新しい暗号が開発され、堅牢さが格段に増した今、これにて情報は確実に護られるということなのか。
これもまだまだ楽観が過ぎるらしい。例えば英語を暗号化している場合、登場する単語の頻度に微かなヒントがあるようだ。
しかし、メアリーがその命運を託し散っていった暗号よりは圧倒的に質が増したには違いない。
その進化の速度が格段に高まった今、暗号の世界も大きく様変わりを始めていくのである。
8月14日(水) 暗号部隊創設。
中世のフランスに関しては、未解決・都市伝説といった但し書きが付くものの、魅力的な謎とされるものが数多く残っている。
その理由は、その正体、目的、真偽に関することが徹底的に秘匿されているがため、らしい。例えばルイ14世の情報のやり取りは、これまた暗号を介して行われたそうだ。
勿論その暗号自体の強度(秘匿性)も万全からは程遠いのだが、正直真面目に解読に挑もうというプロはいなかったため、長い間忘れられていたというのが理由かもしれない。
AIがコモディティ化した今、プロ顔負けのアマチュアがその解読に乗り出す・・あるいはとっくに乗り出したうえで苦戦している、ということが起きているのかもしれない。
ロマンある話だが、自分が当事者になろうとはなかなか思えない現状だと思っている。
8月15日(木) 大暗号の解読。
ルイ14世が作成を命じ、好んで用いた暗号のことを、【大暗号】と呼ぶという。
当事者が全員、解読法ごとこの世を去った後で、この暗号の仲間をどのようにして知り得たのか。
ここはまだAIとかの出番ではなく、人間の叡知と根性論の勝利だった。
暗号に頻出する記号を分析し、それが特定のワードを意味すると推測。後はクロスワードパズルよろしく、穴埋めを重ねるだけだ。
それだけと書いたが、ここに至るまでに300年近くが費やされたのだから驚きだ。暗号として、十分にその役目を果たしたうえで破られたのだと僕は思う。
8月16日(金) 「お前は誰だ?」
ルイ14世の治世では、鉄仮面という謎の囚人が監獄に収容されていたと記録されている。
実際は鉄ではなく布の仮面だったようだが、それを取ろうとしたり、あるいは素性を語ろうとした場合は容赦なく殺すよう密命が出されていたらしい。
そのあまりにも特異な状況から、様々な劇や物語といったエンタメで何度も採用された人物だという。
彼は何者なのか。それを記した暗号が未解読のまま残っていやしないか。そんなロマンには、確かに心が躍ってしまう。
8月17日(土) Black Chamber
暗号を護ること、そして暗号を破ること。そのどちらにも極めて大きな価値があることは、すぐに権力者たちに知られることとなった。
暗号を専門とするプロのグループを作り、日夜行き交う書類を分析し、陰謀を察知したり、国家間に関わる情報を入手したり。
ときにはそれをまた別の他国に売却して、利益を得るなんてこともあったそうだ。
暗号を巡る秘匿と解読のスキルは、急激な高まりを見せたように感じる。集団の叡知と危機感とは、最高のスパイスなのかとも思えてくる。
8月18日(日) Out-of-place artifacts
大正時代らへんには既に、電報という形で長距離感の情報伝達がなされていたという事実は、よくよく考えればとてつもない驚きである。
シンプルな文字列・内容といった制限こそあったのだが、あまりにも飛躍的な、どこか時代を先んじた進化や進歩に、僕はオーパーツめいた雰囲気を感じている。
とはいえ、このようなメッセージを伝達するときは、必然的に漏洩のリスクも高まるし、秘匿したいというニーズも生じるものだ。
そこで生み出された技術が「モールス信号」だという。わかる人同士でしか伝わらない信号のやり取り。ある意味、強固な暗号だ。
テレコミュニケーションの発達と、モールス信号の開発を経た今、暗号作成側が解読側を出し抜いたようであった。
では今週はこの辺で。