僕は高校の頃、古典が好きではなかった。点数を取ることは何とかできたが、そこに面白さを見出せず、受験が終われば早々に文法も単語も頭から消してしまった。
そんな僕だが、今は古典が好きだ。昔の人の哲学や物語を読むと、すごく学びが多く、現代の僕らとそして似たことを悩んだり指摘したりしているんだと嬉しくなるからだ。
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とはいえ古典を当時の文法・単語のまま読解することには未だに興味がない。むしろ迂遠な方法ゆえ、めんどくさくて仕方がないとさえ感じている。
だからこそ、古典を解読することは、それが得意で好きな人に任せたいのだが、そこに書かれていること自体はしっかりと自分も触れたいと思っている。
仏教、方丈記、五輪書。当時の人たちが残した想いを、時空を超えて学べるという意味では、その”暗号”を解読することは知的好奇心を超えた有意義さを湛えている。
では以下、今週分の内容を書いていこう。
- 11月11日(月) 補い合う天才たち。
- 11月12日(火) 数千年のときを経て・・。
- 11月13日(水) 向こうに呼ばれたのか。
- 11月14日(木) あたかもドラえもんの如く。
- 11月15日(金) 最初期のコンピューター言語。
- 11月16日(土) 普遍的な暗号とは。
- 11月17日(日) こねてこねてねじってこねて。
11月11日(月) 補い合う天才たち。

ヴェントリスにとって、研究者からの認知と称賛を受けたことは、またとない解読の好機となった。
線文字Bは古代ギリシャの書記体系だとして、その歴史は神話として記録されたものより、また500年程度古いのだ。
日本語でいう古典と同じく、現代とは単語の意味も文法も異なり、そもそも現代には残っていない言葉さえある始末だ。
実はヴェントリスに欠けていたのはここの素養だ。そしてラジオを通じて認知を得たヴェントリスが手にしたのは、これらの専門家の協力である。
欠けていた唯一とも言えるピースがはまった今、線文字Bの解読はかつてないペースで進み始める。
11月12日(火) 数千年のときを経て・・。

Linear B Script - World History Encyclopedia
線文字Bが読めるということは、その内容が解るということで、そして当時の人たちの暮らしが見えることを意味する。
そもそもなぜギリシャから少し外れた立地の彼らは、線文字Bでそこの言葉を用いたのか。それは単に、隣国の在り方に従ったから、だという。
また、かつて侵略を受けたということも伺えたそうだ。武装をしろと提案する内容から、人柱を捧げよというものまで、様々な言い方からそれが汲み取れる。
数千年の時を隔てて、メッセージが伝わった瞬間。嬉しさが爆発すると同時に、また新たな謎や発見があるから面白いと思う。
11月13日(水) 向こうに呼ばれたのか。

ヴェントリスらの功績により、また古代の人の勤勉さにより、記録から当時の世界が明瞭に蘇ってきた。
何を食べていたか。何を育てていたか。何を納めていたか。事務的な記録だったからこそ、データとして価値があったのだ。
ひとつの偉業を成し遂げて、社会的認知を得た若きヴェントリス。人生これからというときに、彼に悲劇が起こる。
タンクローリーと衝突し、突如若くしてこの世を去ったのだ。シャンポリオンもそうだったが、過去からの声を聞くことは、寿命と引き換えに果たせるものなのだろうか。
11月14日(木) あたかもドラえもんの如く。

第二次世界大戦中は、人が立てる理論や解読法、さらには推測といった方法を、機械が数の暴力で跳ね返す時期であった。
そして暗号作成側も解読側も、圧倒的計算力を持つコンピュータ同士をノーガードでぶつけ合う、そんな様相へと変化していったのだ。
ただし、ここでいうコンピュータは、現代のそれとはかなり異なる。なぜならそれらは、計算「しか」できなかったからだ。
命令を変えるだけであらゆる演算を行ってくれる。そんな夢のような機械は作れないものなのか。
実は戦時中にそのプロトタイプは作られていたそうだが、機密を保持するために設計図ごと廃棄されたそうだ。
プログラムで演算を変えられる新たなコンピュータ。その夢は後世に繋がれていくのであった。
11月15日(金) 最初期のコンピューター言語。

少し余談になるが、僕は高2の頃、初級システムアドミニストレータという資格を取っている。その勉強の中で一番辛かったのが、二進数だ。
あらゆる命令をコンピュータが理解できる形に書き起こすには、二進数形式で変換する必要がある。そこまでは納得したが、それを扱うことにはすごく難儀した。
「HELLO」という言葉を解せないコンピュータであっても、二進数でそれを「0100100001000101010011000100110001001111」と表せば、理解できるそうだ。
人類が初めて、コンピュータと意思疎通を果たそうとした際に登場した言語。そう思えばまた違った感情が湧いてくるが、やはり理解するにはあまりにも難儀である。
11月16日(土) 普遍的な暗号とは。

コンピュータが登場したのは第二次世界大戦の頃だったが、それは存在やノウハウ自体がかなり長い間秘匿されたため、市場に出てくるまでには少しラグがあった。
しかし一度民間の場に出てしまえばそこからの進化はとても急激に起きていった。あっという間に、いわゆる「パーソナルなコンピュータ」が作られていったのだ。
端子の研究・開発もどんどん行われ、機械の性能は上がっているのに、そのサイズが小型化していって、果ては安価にもなっていく。
そうして全員に広くコンピュータが普及する準備ができたところで、ある問題が発生した。それは、スタンダードな暗号とは何か、である。
これまでは一部グループの内部や軍事利用のみ、という風に限られた用途しか持たなかった暗号が、一気にその規模を通り越して運用される必要が出てきたのだ。
ユーザー全員の秘密を守り得る鍵。その役割を担うに値する暗号とは何か。それを巡るストーリーが、これから始まるようである。
11月17日(日) こねてこねてねじってこねて。
最初期のスタンダードな暗号は、細分化と並び替えを基本手段として作成されたそうだ。それをルシファー暗号と呼ぶ。
そのプロセスはパン作りに例えられていた。記事をこねて、引き伸ばし、千切っては折り畳んでまたこねる。
これを繰り返すことで完全なシャッフルが行われるのだが、送信者と受信者でどのパターンを用いるかについて取り決めておけば、復号が可能となる。
ちなみにこのアイデアについては、NASAからの圧力がずっと掛かっていたそうだ。NASAに破れないレベルのそれを作るべからず、と。
NASAにもそんな狭量なところがあったのかと、少し驚かされるエピソードである。
では今週はこの辺で。