忙しいとついつい、「人手が欲しい!」と思う。猫の手も借りたいというヤツだ。だがその懇願は大抵、気のない返事でスルーされるものである。
「社長は現場のことを分かっていない!」と吠えるのは簡単だ。しかし多分、同時に社長側も、「社員は経理のことを分かっていない!」と嘆いている気もしている。
社会人になりたての頃、僕は「人件費はできるだけ削ってナンボ」という考えに対し、社畜思考に繋がると思ってすごく嫌悪感を持っていた。
しかしそこから10年近く経ってみれば、「人件費は削ってナンボだな」と、真逆のことを腹落ちさせている。それは僕が社畜になったからだろうか。
実を言うとそうではなく、単に経理側の目線を獲得しようと自分なりに色んなワークに取り組んだ結果、そう思うようになったに過ぎない。
一度徹底して算数に向き合うと、人件費のリアルが見えてくる。そして同時に、本当に建設的に人員増を訴える術もまた、明確に見えてくる。
ということで今日は、僕がマジで手が回らなくなる予感がしたため、上の方々に人員増を提案するために作った資料を使いながら、そんな記事を書いてみる。
なぜ人員を増やせないのか?
まずは、なぜ現状から人員を増やすことができないのか、その理由を考えてみよう。といってもぶっちゃけそれは死ぬほど簡単。利益が減るからだ。(最悪赤字になる)
思っている以上に、人件費というのは比率として重い。例えば、塾業界なら常識かもしれないが、すごく顧客ウケがいい個別授業の利益率は、ぶっちゃけかなり悪い。
個人塾がどちらかと言えば集団自習教室のような形式や、集団授業クラスを推すのは、ここに理由がある。薄利多売のレッドオーシャンに突っ込んでしまうからだ。
売り上げの半分を、授業を担当した講師の人件費に回す。残り半分が会社に残る・・のではなく、テナント代・光熱費・税金諸々を差っ引いて、それが利益として残る。
一度冷静に計算してみたが、今僕が受け持っている校舎の形態を維持したまま僕が独立なんてしようもんなら、手取りは今より減ってしまうほどだ。
あなたも稼いでいるという自覚はあるかもしれないが、同時に恐らく、思った以上に引かれている。お金の勉強は欠かすことができないと、本当に気が引き締まる。
人員を増やすために必要なデータ。
となれば、人員を増やすことを、どう上に納得させればいいか。実はシンプルで、そうすると”利益”が増えることを証明すればいい、となる。
或いは、別に人を増やしても既存の体制でペイできることの証明や、増える人件費をマックでいうポテトみたいな商品を開発し埋め合わせるという提案を添えればいい。
そのために必要なのは、数値化されたデータだ。ということで以下、使えても塾業界のみという狭い対象だが、僕が作成した資料を引用しながら、紹介する。
まず、冷静に毎月の売り上げをExcelに打ち込んで一覧にしてみた。とはいえ薄利多売モデルのため、コマ数と忙しさに対して、売り上げは思った以上に少なく見える。
しかしここで、我ながら恐ろしいことに気が付いた。テナント代・光熱費のデータが、手元にないのだ!!だから、すぐに教えてもらえるよう依頼した。
とはいえ推測で近似値は出せるはず。そう信じて、別コンテンツである個別授業や集団授業との教室利用の兼ね合いを調整したうえで、その金額を表に入れ込む。
すると、粗利益率は35~44%くらいの間に落ち着くことが判明した。・・・これって多いの?少ないの?
ということで調べてみた。業種によるが、サービス業は20%程度を粗利益率として確保できていれば、十分優良なのだと言えるらしい。
となれば、上記の数値の見方が変わる。粗利益率をあと15~24%落としても優良なのだから、その差額で新しい講師の人件費をペイできるかどうかだ。
余談だが、利益率が高ければ高いほど良いのかと言われれば、そこまで脳筋な話でも無いのだという。
例えば、「つまり設備投資とか人材の教育費に回していないってことですよね?」という風に解釈されることもあるようで、実際そうなっていることもあるそうだ。
それで計算すると、完全にフルタイムで入ってもらうと赤になる(粗利益率20%を下回る)ことがわかったが、特に多忙な時間帯に絞れば、十分ペイ可能だとも分かった。
とはいえ、まず最初はある程度平和な状況下で経験値を積んでもらい、その人の成長を促すという先行投資的な見方も必要だ。
それも念頭に置き、現状の多忙さを数値に置き換えて比較し、その場合は費用がどうなるのかとそろばんを弾く。
すると、結構現実的な人員配置が見えてきて、少し心が落ち着くような感覚を抱いている。忙しいから人を増やして!というテンパリの解像度が増したのを感じている。
後はこれを基に提案をするだけだ。最悪、「じゃあお前が募集をかけて探せ」という言質が取れれば良い。それくらいは、やる。
現状、僕が僕自身を猛烈に叩き売りをすることで、校舎運営が表面上円滑に回っているだけだ。そのバグを美化する気はさらさらない。
感情論も算数に置き換えれば、案外建設的な提案に昇華できる好例だと思う。早速明日、直接相談できるチャンスがあるので、掛け合ってみることとする。
では今日はこの辺で。