今日は、本のタイトルのようなことを言うが、「感情は、期待するほど早くは切り替わらないが、絶望するほど長続きはしない」という話を書いてみる。
これは、最近書いた記事のトピックに重なるが、感情の持続時間に関するベルギーの大学の調査がきっかけだ。人がそれぞれの感情を帯びる時間の相場が知りたかった。
悲しみの感情は他の感情に比べ240倍も長く続くことが判明(ベルギー研究) : カラパイア
アンケートの結果は、本当に興味深い。だからこそ、ただ知って満足するのではなく、それを基に自己観察と内省を度々入れることで、より理解を深めようとしている。
まだまだ実体験としてのデータ数は少なめだが、早速面白い発見は得られた。今日はその一部を、記事としてまとめておく次第である。
気持ちをすぐに切り替える≠一瞬で感情をスイッチする。
僕の中で、感情は瞬時に切り替えられるようになって然るべきという考え方がある。だが、これ自体かなり無理があり、苦しみを生んでいることにも、薄々気付いている。
これを頭の中だけで処理しようと思うと、潜在意識が邪魔をしてくるため、客観的な尺度を基に反省するようにしている。それこそ、先述のグラフだ。
事あるごとに職場の壁に貼ったあのグラフを眺めて、自分は今どの感情を抱えており、それは大体どれくらい持続するのか、都度参照している。
そして最近気付いたのだが、僕がよく感じる感情は主に2つしかない。それは不安と苛立ちだ。感情がブレていることを自覚し、冷静に確認すれば、大体どっちかなのだ。
どちらも些細なことがきっかけで発動し、しれっと自分の思考と置き換わる。自分の豆腐っぷりとせっかちさに、自分で驚くこともある。
地の性格だろうが、激怒といった昂ぶりを経験することはほとんどなく、苛立ち・不安の次に経験するのが多いのは寂しさ、といった具合だ。
こうして自分の感情をラベリングして、その後に最近意識的に観察しているのが、さっきのベルギーの大学による研究で判った、感情の平均持続時間だ。
例えば苛立ちであれば1.3時間ほど持続するという。計算がめんどくさいが、これは大体78分ほど。だから僕も、イラついていると感じたら、78分でタイマーをセットする。
その間はなるべくそこから気を反らすように仕事に集中したり、或いは娯楽に取り組んだり、人と喋るアポを入れたりして、ただただ時間を経過させている。
そしてタイマーが鳴ったとき、自問自答する。その苛立ちは今も感じているか、と。その問いの答えが「うん!」だったことは、今のところ1回も無い。
これは不安も寂しさも同じで、ほぼ例外なく、相場より早く消えている。そう考えれば、僕は平均値から比べれば、むしろ気持ちの切り替えが上手なのかもしれない。
これは今まで一度も持ったことが無い仮説だ。僕はむしろ平均値よりネガティブな感情が持続する男だと思っていたので、比較しないと何も見えないのがよくわかる。
尚、もし平均以上に感情が持続していれば、グラフの右側にある強い感情のどれかと取り違えている可能性が高いだろうと、今はそう構えている。
ここからは余談だが、最も長く続く感情は【悲しみ】だそうだ。これは子ども心に、僕も原体験がある。8歳の頃、祖父が他界した。それが初めての「死」の記憶だ。
死を受け入れられず、僕は通夜も葬式も、隅っこに頭を突っ込んでひたすら泣いていた。棺に横たわる祖父の顔を見れたのは、しばらく経ってからだった。
その後、火葬場に言った記憶がある。最後の最後くらい顔を見ないのは永遠の不孝野郎だと自分を鼓舞し、最後はきちんと永眠している顔を見たのを覚えている。
以来僕は、その後の空虚感とどう折り合いをつけるか、苦心惨憺した。祖父は確かにこの世から跡形もなくなってしまったが、記憶として僕の中に生きているとも思った。
お墓参りに何度か通い、四十九日を経て、少しずつ日常から死の悲しみが消えていく頃には、大袈裟でもなんでもなく、季節が変わっていたのを覚えている。
それを考えても、通夜や葬儀を始めとする「送り出し」のシステムは、遺族のメンタルに寄り添って設計されているとすごく思わされる。
死の直後は諸々の準備に多忙となって、実際は死を感じる余裕がない。一番辛いところをそれによって乗り切ってから、静かに愛しさや切なさに気持ちを移していく。
余談だが僕は、祖父のお見舞いに1度行かなかったことがある。そしてその機会が、振り返ってみれば最後のチャンスだったのだ。今、このことは猛烈に後悔している。
僕は全く長生きしたくないのだが、その理由の1つは、さっさと生き抜いて、去っていった人にあの世できちんと、不義を謝りたいという想いがあるからだ。
僕はこの世においてあまりにもカルマを積み過ぎた。親の因果が子に報いという言葉もあるが、僕は僕の咎を自分で背負って、そして消えたいなと実はずっと思っている。
最後はちょっと話が反れてしまったが、つまり感情の持続時間を観察し、データを取り直す作業は、非常に有益であるというのを念押ししておく。
では、今日はこの辺で。