以前、インポスター・シンドロームについて書いた。
jukukoshinohibi.hatenadiary.com
簡単に言えば、『自分は成功に値しないと考え、逆に失敗したらそれを当然と思う思考』のことだ。
でだ。やっぱり、一定数で『インポスタ―っぽい』生徒を散見する。テストで結果を出そうとも、頑としてそれを認めない感じ。
『こんな点数で・・』とか、『いや、まだこんなに間違ってる・・』とか。聞いていて胸が痛くなる。なぜこんな考え方になったのだ?
―というのを考えていると、その原因らしき要因を知った。そういう生徒程、大人から否定的な言葉を日常的にかけられているということだ。
『自分では良いと思った点でも、全然褒められない・・』『できないのはお前のせいだと先生が取り合ってくれない・・』
―という事実をぽつりと聞くたび、同情と怒りが込み上げる。一体その人たちは何を考えておられるのだ?
そこで今日は、『子どもの成長を喜べない大人』の特徴について、なるべくドライに書いてみようと思う。
『安直な優越性の追求。』
アドラー心理学が極めて分かりやすく勉強できるこの本に、すごく面白い言葉が書いてある。
それは『安直な優越性の追求』だ。
人は『劣等感』を努力で補うのに疲れたとき(或いはそんな勇気がないとき)、上記の行動に走るのだという。
その行動例とは、以下の通り。
① 自分が過去に立てた功績をことあるごとに言う。
② 自分の知人の優れた人を引用し、話に出す。
③ 他者の欠点を並び立て、指摘する。
―要するに、『ウザい自慢』である。こういった風な行動を取るのは、自分に自信が無いことの裏返しだという。
『自信が無い』からこそ、過去の自分の栄光や、すごい人を引用し、自分をすごく見せる。
それが無ければ、他者の欠点を並べ立て、自分をすごく見せる。ただ、それらはまやかしであり、現実は何も変わってないのだが・・・。
こう考えると、日頃から自慢だらけの人は、ぶっちゃけ可哀そうにも思える。
さてさて。この定義を踏まえた上で、話を戻そう。基本、子どもの自尊心をへし折るセリフは、決まりきったテンプレがある。
① 『自分の小さいときに比べれば大したことない』みたいな過去引用タイプ。
② 『○○くんのが良くできてる!』みたいな他者比較タイプ。
③ 『まだここができてない!』みたいな欠点列挙タイプ。
-どうだろうか。『安直な優越性の追求』のモデルケースにそっくりではないだろうか。
つまり、こういうセリフを吐く人達は、『自分に自信が無い』ことの裏返しである可能性が高そうである。
もしそうでなければ、『すごいじゃん!』と素直に成長を喜べなければオカシイ。
ということでここからは、お節介だがそういうセリフを正す方法、及び受けちゃったときの方法を、続けて述べていく。
【つい言っちゃう人向け】『安直な優越性の追求』から脱するには?
まず、『他者の成長』を『自分の敗北』みたいに考える認知の歪みを正そう。
指導する側において、教えを授けた者が自分を追い越していく。それはまさに、大成功に他ならないではないか。
自分の能力以上の人間を育成することこそ、講師の仕事の究極のゴールだと思う。
それが分かっていないと、『他者の成長』もとい『生徒の成長』が『自分の敗北』に感じられる拗れを生むこともある。
自分より才能に恵まれた生徒。自分より上の大学にすんなり受かっていく生徒。それらを恐れるのではなく、祝うのが正しい。
正直、子どもの頭を自信を折る言葉で押さえつけても、あなたは現状からどこへも進めていない。劣等コンプレックスの沼にハマっているだけだ。
もう一度言うが、『生徒の成長』は『あなたの敗北』ではない。
そういうワケの分からない対抗心や競争原理は、弊履のごとく打ち捨てることから全てが始まるのだ。
また、『厳しいことを言われたから育った!』みたいな考え方は、少なくともあなたはそうだっただけで、他の人がそうとは限らない。
追い詰めるような発言をし続けた結果、子どもがリストカットや非行に走った例など、僕はいくらでも知っている。
一つの考え方に固執することなかれ。視野は広く持ってほしい。
【言われた人向け】心理を知って、スルーしよう。
一番は、そういうのをスルーして、『自分で自分に○をあげられる』メンタルを目指すことである。
しかし、そういった声を『無視しよっと』という思いだけで受け流すのは困難だ。僕自身もかなり難儀している。
ということで、自分は嬉しいと感じることに冷や水をぶっかけられた時は、やはりさっきの心理を思い出してみてほしい。
謎の自慢や欠点攻撃、他者自慢→自分に自信が無い
―となれば、結構ガチで、『かわいそう・・』『暇なのかな・・』といった風に、怒りとは別の醒めた感情が湧き上がってくる。
相手の挑発に真正面から乗るから、心が折れたりムカついたりするのだ。
実は色んな腹が立ったり傷ついたりする行動には、結構しょうもない、或いは可哀そうな心理が働いていることが理由であるのが多い。
少し興味を持った方は、ぜひ心理学の本を読んでみてほしい。
―ということで今日も少しだけ突っ込んだことを書いてみた。
心が折れた子の将来は、矯正しないと本気で暗い。僕も何度も心を折られた人間なので、本当によくわかる。
願わくば、そういう発言をしないだけでなく、そういう発言から子どもたちを守ってあげたい。強くそう思う。
それでは今日はこの辺で。