僕は提出物が嫌いだった。
『〇月〇日に~を出せ』という、受理した覚えのない命令。仕上げても際立った褒美は無いし、仕上げなくてもどうでもいい観点から減点されるだけ。
色々と落伍していた僕は、そんなもんスルーするか、クソみたいな出来で提出して、それ以上関わらないようにしてきたものだ。
―が、そういう風に吹っ切れられるのは、何だかんだで少数派らしい。
やる気も意義も湧かないプリントを前に、ブーブー言いながら、授業前後の時間、生徒がそれに取り組むのをよく見ている。
これに対し、『ええよせんでも』なんて無責任なことは、流石に言えない。だから、いたたまれないので、心理学的なコツを2点ほど伝えてみた。
今日はそんなお話。
スピード命なら『怒りの感情』を使うべし。
まず生徒に伝えたのは、
『過去にイラついた経験を今ちょっと思い出せ』
というもの。
実は"怒りの感情"には、クオリティは雑になるけど、決断や作業のスピードが上がるという特性があるためだ。
断言するが、課題の性質として、ノルマを埋めることが目的であるなら、クオリティなど死ぬほどどうでもいい。ギリ読めればそれで及第点なのだ。
だからまずは、これを伝えて、思い出しイラつきモードに入ってもらった。
時間制限を設けて、それのみに集中。
あとは『ポモドーロ・テクニック』との複合技だ。
大体どれくらいの時間で終わると思う?と尋ね、そこで出た時間からさらに5分ほど削った時間を提示し、タイマーで計ると伝えたのだ。
当然軽い怒りを僕に覚えるが、それもある種狙った効果。怒りやイラつきをMAXにしておけば、スピードは結構出てくれるものである。
―さて。これらを複合させた結果はどうだったか?
面白いのだが、削ったはずの時間よりもさらに早く完成し、かつクオリティもそこまで雑ではなかったのだ。
多分これは、途中で深い集中状態に入ったからではないかと考えている。実際、生徒の目の色が途中から変わってたし・・・。
ということで、そういう狙った効果は百発百中で出ないのは前提だが、好ましく作用することもあり得るよと言う提案を持って、今日はおしまいとする。
例えば宿題にイラつくお子さんがいるのなら、それを精神論で封じるのではなく、その怒りを燃料に、怒涛の勢いで文字を埋めろと焚きつけてもいいかもしれない。
ネガティブな感情も所詮はTPO。使い方と場所さえ間違えなければ、強い味方になってくれるのである。
では今日はこの辺で。