今日、以下の動画を、やや今更だが視聴した。
タイトルからなんか感情論が湧いてしまいそうだが、ざっくり言えば「インバウンド価格で海鮮丼が8,000円になったことに怒り!」みたいな報道があったのだという。
ちなみにインバウンドとは、死ぬほど乱暴に言えば外国から来た観光客が日本で払うお金のことだ。そしてこれに対するコメントとその捕捉説明は、すごく面白かった。
煽りあいなんて陳腐なエンタメとしてではない。物事の本質を立体的に考える観点ゆえに、だ。
今日は簡単にこの動画を観て思ったことを、つらつらと書いていく。
高い?安い?
まずそもそも論だが、海鮮丼が8,000円するのは高いのか、という問いが立つ。正直言うと、これでも売れている時点で、世界基準としては”普通”なんだと感じている。
そもそもこれまでの1,200円とかそのくらいの価格帯が、異常に安価だという可能性もある。白状すれば、僕もこう指摘されて、「考えたことなかった・・」と思ったけど。
ここからの論理が面白いのだが、安い海鮮丼に乗っている安価な毛ガニやウニはどこから来ているのかというと、実はロシアなどが主な産地となる。
そしてそんなロシアは現在戦争中であり、その状況下で他国への輸出が滞らないわけがない。さらに言えば、低価格前提なのだから、必然的に大量の漁獲が求められる。
となれば毛ガニの生息数もガクンと落ちるのは明白だ。そして漁獲量が減れば、需要と供給の関係で売値が上がるのも自然である。(サンマと同じ現象が起こる)
そこへきて光熱費の高騰も重なれば、普通はコストプッシュインフレが起きて、自然現象として値上げが発生するはずだ。この辺は高校の政治経済でも習う話である。
しかしながら、「高くしたら常連さんが・・」といった情もあってか、値上げに踏み切れない店は多い。とはいえその遠因は、情だけではない気がする。
例えばメディアはこぞって、激安店を持ち上げて、値段をツリあげる外国人観光客を叩く。「インバウンド」と調べたら、もうそれだけで不快な気持ちになるばかりだ。
激安店が激安であることには、必ずカラクリがある。例えば大手チェーンなら、大量に食材を仕入れることで値下げができる、といった事情がある。
個人店なら、そもそもそのビルを保有しているから家賃が発生しない、一人だから従業員も要らない、年金生活だから利益も要らない、といった風に。
そこもまた異端であり、その基準を全てに押し付けるのはおかしいと思う。値段や価格について鈍感であることは、もはや呪縛に等しい。この動画を観てそう思った。
ちなみに、値上げに対して感情的に反応し、イタくて仕方がないコメントをする層は一定数いるわけだが、その人たちはどういう心理がそうさせているのだろうか。
例えば「この価格に見合った価値を提供していない(キリッ」というクソ痛いコメントを言う人の中で、実際にそのものを利用している人は何人いるのだろうかと疑問を持つ。
実際に調べたわけではないが、一度も使ったことが無い人が一番多いんじゃないかと思っている。5,000円とか10,000円に過剰反応しているだけじゃないか、と。
僕は元々、小売業に勤めていた時期がある。その時よく言われたのが、「値下げしか要求してこない顧客の質は悪い」というその通り極まりない助言である。
そしてそういう顧客層を取り込むと、単純に「ファン」がいなくなる。つまり、不況時に真っ先に見捨てられ、簡単に閉店へ追い込まれるのだ。
この辺の話は【夢と金】にすごく詳しく書かれているため、また深いところで話が繋がったと納得している。
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というわけで、僕自身も自分が値段や価値に無頓着だったことに目が覚めるような話だった。それを踏まえて、今後はどう構えていくか。
例えば「高すぎる!」というニュースが飛んだ際、世界的に見てその価格は本当に高いのかを調べるとか、円安の動向をチェックするとか、そういうのがいいかもしれない。
そう思えば、違った見え方をしてもいい。8,000円を買ってくれる外国人客がいるから、別の安価なメニューが利益率度外視で提供できている、という感じだ。
僕自身は別に富裕層では全くない(むしろ中間層の下の方)のだが、だからといってどこか貧しい思考と物言いをしていたら、じわじわと負のループに嵌る気がする。
論理と勉強という傘を装備した状態で、小石が飛んでくる状況下に身を置けるような強さか鈍感さを、意識的に獲得したいと強く感じている。
では今日はこの辺で。