ろくすっぽ結果らしい結果を出す前に公言するのも恥ずかしいが、僕は今、校舎長としての自分の在り方を意識的に変えようと努力している。
僕は場を預かる者、チームを率いる者”ではなく”、場所を場所たらしめるため管理する者であるべきだ。そんな風に考えている。
そう思うに至ったプロセスは、以下の記事2つにまとめたので今回は割愛するが、その後になってまたある気づきが自分の中に湧いている。
jukukoshinohibi.hatenadiary.com
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美術館を英語で言うと「art museum」という語を当てるのだが、これはつまり、「芸術品のmuseum」という意味だ。では、そもそも「museum」とは何か。
英英辞書においては、以下のように説明されている。
a building where important cultural, historical, or scientific objects are kept and shown to the public
重要かつ文化的・歴史的・科学的な物が保存・展示公開されている建物
これ自体は「でしょうね」という面白みに欠けた定義なのだが、語源まで調べると、すごく面白いことがわかる。今日はそれをテーマにした記事である。
僕の理想の働き方は、【museum】の館長か。
「museum」の語源は、古代ヘレニズム世界にまで遡るという。時代で言えば2300年前くらいの話だ。その詳しい説明は、以下のnoteに書いてある。
「museum」は、英語で「博物館」「記念館」「美術館」「展示館」を意味する単語です。
その語源は、ギリシャ語で「ムセイオン(museion)」という、「ムーサ(Muse)たちの神殿」に由来します。
ムーサとは、英語ではミューズといい、古代ギリシアで信仰された学術と芸術をつかさどる9人の女神の総称です。
本来は神殿であったのが、学堂として発展し、現在の「博物館」「美術館」などの意味に使用されるようになりました。
この太字にしたところを読んだとき、思わず胸が昂った。僕が学習塾との繋がりを感じていた美術館もまた、学堂という同じルーツを持っていたのだ。
更に、Wikipediaの記載だが、こんな説明を発見し、更にテンションが高まっている。
ギリシア文化の伝播に従い各所に創建されたが、特に有名なものはプトレマイオス朝エジプトにおいて、時のファラオ、プトレマイオス1世が学府アレクサンドリアに設立したもので、王の私財によって万邦の英哲俊士が集められ、文献学を中心に天文学、物理学など学芸が大いに隆盛した。
当時世界最大の図書館「アレクサンドリア図書館」もムセイオンの付属機関であった。その後、ローマ支配下でも存続したが5世紀はじめのキリスト教による学者の虐殺を伴うテロリズムによって破壊され消滅した。
あらゆる知が集結し、統合し、共有され、また新たな知がそこに創造される場所。それが、ムセイオンなのだ。僕が目指すべき場所は、美術館より更に、根っこにあった。
僕は自分のいる校舎を、ムセイオンにしたい。こう考えると、僕の働く理由がまたより手応えをもって更新されるような気がする。
もっとも、ムセイオンが実際にどんな場所だったか、それを現在に伝える文献は皆無に等しい。現在に残る美術館や博物館の哲学から、それを類推するしかない。
属人的でなく、あらゆる知がネットワーク上に繋がり、共有され、ときに具現化して展示される。僕にとっての理想が、どんどん見えてきた。
―となると、美術館や博物館と違う点が際立ってくる。学習塾における、美術館や博物館でいうところの展示品とは、果たして何なのか、だ。
講師から生徒へ伝わる教えも、生徒から講師に尋ねられる疑問も、そこには形が無い。それを可視化する工夫をしなければ、つまり”なにもしてない”場所になる。
ここまで書いてハッとした。僕の仕事はここにある。そう直感したのだ。具体的には、僕が果たすべき役割は、教えや学びを形にすることである。
それはテストの点数という数値であり、頑張る様子をSNSで広報することであり、わかり易い参考書を聞いてそれを校舎に置くことである。
”教え”や”学び”の可視化を果たすことが、経営面にも関わるドミノの1枚目。そのことを今、しっかりと実感できている。
例えば、生徒や保護者の方の興味を集めるためには、発信が必要だ。しかし発信のためには、その材料が必要である。なら、僕はそれを生むことに奔走せねばならない。
前の記事で出した暫定解。「僕は場所のために働きたい」という想いは、よりヴィヴィッドな輝きを伴い、今の自分の胸に刺さっている。
僕にとってのムセイオンとはなんなのか。利益や売り上げという存続に必要不可欠な要素と二本柱にして、毎日必死で、それでいて充実しながら、考え抜きたいと思う。
では今日はこの辺で。