精神年齢9歳講師のブログ

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【英文読書ルーティン日記201】"The Code Book"読書感想ブログ16 ~古の声を聴けるもの~

「解読」という言葉は、なぜあんなに魅力的な響きを帯びているのだろうか。誰も読めなかったものが読めた瞬間の快感。内容が分かったことへの興奮。

 

あらゆる感情の昂ぶりを内包しつつも、言葉の響きはどこまでも静かだ。そのギャップが、魅力を醸成しているのかもしれない。「明察」と同じくらい好きな言葉だ。

jukukoshinohibi.hatenadiary.com

 

しかし僕はやはり、暗号化された”現代の”言葉が読めることには、さほど興味をそそられない。ゾディアック暗号が解読されたとして、「へぇ」としか思わないだろう。

 

むしろ、ヴォイニッチ手稿や線文字シリーズ等、それを書いた人が既にこの世から消えてしまったような遺物が解読できる日を、ずっと待ち望んでいる感じだ。

 

恐らく解読できる前に僕もまたお迎えが来て、あの世で答え合わせをすることになるんだろうと予想しているが、それもまた一興だ。

 

考古学の話が始まった今、本を読むペースはさらに早まっている。では以下、今週分の内容を書いていこう。

 

 

10月28日(月) 好奇心と飽き性の権化。

 

 

今回の章を読んで「はっ」としたのだが、実は古代人の言葉が読めたとして、そこからでは伝わらない情報がひとつある。

 

それは「発音」だ。太古の昔、その文字がどう発音されていたかは、これこそ完全に歴史の闇の中に消えてしまったものである。

 

その特性はヒエログリフも同じで、そういう限界もあってか、「読み方分からんものを調べても仕方ない」という諦めは、1700年当時既に存在していたそうだ。

 

しかしその雰囲気を吹き飛ばし、古代からのメッセージをより詳細に汲み取ってみせた天才が現れてくれたのだ。

 

あらゆる語学に秀でた好奇心と飽き性の権化、トーマス・ヤング。彼によって、古代からの物語が再び読めるようになったのだ。

 

10月29日(火) パラダイムシフトが起きる前の定め。

ja.wikipedia.org

 

人名をヒントにして発音を推測するというヤングの手法は、概ね予想と違わず正しかったと、後世に追認されている。

 

しかし彼自身は、当時主流だった「ヒエログリフはただの絵だよ」的な風潮をひっくり返すほどの説得力も熱意もなかったらしい。

 

一通りの研究をまとめて出版はしたものの、彼はヒエログリフに関する研究からかなり早めにフェードアウトしてしまったのだ。

 

余談だが、「トーマス・ヤング」と検索すると、肩書きは「物理学者」となっている。

 

フェルマー同様、本業ではない余暇の手遊びとして、ヒエログリフの解読が行われたということか。なかなかに強烈な話である。

 

10月30日(水) 謎の既視感。

 

ヒエログリフに魅せられた者は、トーマス・ヤングだけではなかった。彼の仕事を引き継ぐ英才が、フランスに居たのだ。

 

その名をシャンポリオンという若者は、二十代の後半にしてヒエログリフ研究歴二十年という早熟の天才であった。

 

ただ、研究というより、ナポレオンに同行してエジプト遠征に出た学者のコレクションを見て以来、すっかり魅了されていた、という方が正確だ。

 

「この碑文はまだ誰も読めた人がいない」という一言に少年の心は鷲掴みにされた。以来ヤングと同じく、あらゆる語学に精通し、解読に向けた武装を重ねてきたのだ。

 

そしてシャンポリオンはヤングの成果を引き継ぎ、さらにそこを取っ掛かりとして、封じられたメッセージのさらに深いところへ到ろうとするのであった。

 

10月31日(木) 常識に囚われないがゆえの快挙。

 

ヒエログリフに用いられる発音の規則は、エジプトにとって余所者の名前を表記するときにしか適応されない。これがこの頃の共通認識だったという。

 

例えばアレクサンダーという名前も別の碑文にはあるそうだが、それは特殊な表記に過ぎないのではないか、と。

 

日本語でいえば、例えば「亜米利加」という言葉が、小学校で習う四字熟語の分類のどれにも該当しないのに似ている。

 

そんな思い込みを取っ払ったのがシャンポリオンの発見だ。彼は類い希なる言語力と推理力を駆使し、ある人名を読み解いた。

 

その名は「ラムセス」古代エジプトにおける最も偉大で著名な王の一人だ。ヒエログリフの表記は、普遍的なルールだったのだ。

 

この発見に沸き立ったシャンポリオンは、興奮しながら兄弟に報告し、そして倒れ、そのまま数日寝込んだという。

 

緊張と興奮と緩和の劇薬っぷりがよく分かる逸話ではないかと、個人的には感じられる。

 

11月1日(金) 早逝。

 

長年の研究を、シャンポリオンは一つの論文として結実させた。古代の情報が千年以上の時を超えて、再び読めるようになったのだ。

 

ただ、コペルニクスガリレオのときもそうだったが、パラダイムシフト直前の大発見に対する旧勢力の意見は辛辣なものだ。

 

彼に相対したものとしては、なんと先に登場したトーマス・ヤングもいたそうだ。(もっとも、その理由は先行研究である彼の功績をシャンポリオンが無視したから、だが)

 

しかしシャンポリオン自体はそんなことなどどうでもいいのか、長年の夢であるエジプトに繰り出し、生でヒエログリフを見る好機に恵まれたそうだ。

 

そうやって目を輝かせながら夢のような世界を何ヵ月も満喫したシャンポリオンだったが、その終わりも突然だった。

 

彼には気絶癖とでもいうべき体質があったのだが、それは脳に起因する何かだったらしい。彼は41歳の若さだったが、脳卒中でこの世を去ったのであった。

 

11月2日(土) これからのシャンポリオンへ。

 

シャンポリオンが没して約2世紀が過ぎ、その間も古代の未解読文字が次々と破られていった。

 

当時の人はそれを暗号として秘匿したわけではないので「破る」という表現は少し違うかもしれないが、復号に近しい作業の質にはなっている。

 

ということで、未来のシャンポリオンに当たる人の登場する余白はもう残ってなさそうな雰囲気がある。

 

ただしそれは雰囲気に過ぎない。Wikipediaを見ても分かるのだが、世界には数多の未解読文字がまだまだ残されている。

 

続いてはそれを紐解く章になるらしい。第一陣のものは、線文字Bだ。

 

11月3日(日) 「俺が読みたいのだ!」



 

線文字Bの発見は、考古学者アーサー・エヴァンズによるものらしい。彼の発掘により、神話として語られたものは、歴史として受容されるようになった。

 

複雑なシステムながら、機能によって区画分けされた都市の存在。それはすなわち、書記体系、つまり「文字」による記録があって然るべきだ。

 

アーサー・エヴァンズの直感を裏付ける発見は、その後の発掘調査ですぐに出てきた。何かが刻まれた粘土板が、複数出土したのだ。

 

となれば問題は、「なにがそこに書かれているか」である。そこを突き止めることこそが、次の大事な作業になるのであった。

 

では今週はこの辺で。

 

 

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