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【英文読書ルーティン日記192】"The Code Book"読書感想ブログⅦ ~暗号のコモディティ化~

昔読んだ、廃墟訪問ブログで、1つとても印象に残っているものがある。(勿論これは不法侵入なので刑事罰に問われかねないのだが)

 

それは、廃墟の引き出しを開けた際に出てきた、膨大な日記の山だ。さすがにあちこちがカビて、湿気ており、状態自体はとても悪かった。

jukukoshinohibi.hatenadiary.com

 

しかし内容自体を判読することは可能で、それを見ていると、そもそも人に読まれることを想定していない、とても私的な内容が書かれていることが分かった。

 

そしてそのとき、得も言われぬ不思議な感情を持ったのを覚えている。知られることがないはずだったものを知ったという事実。悪趣味だが、それは快いものだった。

 

だから、人は隠したくなる。だから、人は知りたくなる。暗号を巡るやり取りは、意外と人間の本能的なところに刺さっているのかもしれない。

 

それを前提として、今週も読書を始めていくことにしよう。

 

 

8月26日(月) 暗号自体のコモディティ化

 

暗号がポピュラーになった一例として、19世紀末から流行し始めた推理小説が挙げられる。

 

ドイルはその作品に度々暗号を登場させ、それを鮮やかに解読するホームズという展開を描いていた。

 

また、エドガー・アラン・ポーは単暗号方式のそれを読者から広く募り、それに片っ端から挑戦しては完勝した、ということをしていたという。

 

子供遊びに過ぎなかった暗号が、社会に広く浸透していく時代。そしてその端的な例が、この後登場するのであった。

 

8月27日(火) 謎の男・ビール。

 

その男・ビールは、恵まれた容姿と日焼けした肌を持つ、絵に描いたような好青年だったという。

 

彼はとあるホテルに突然現れると、そのままひと冬の間ずっと滞在し、そして気候が温かくなると、出現と同じくらい突然、その姿を消したのだ。

 

しばらく経つと、日焼けの度合いを増したビールは、再びそのホテルに現れた。彼はそこの支配人を信頼していたのか、意味深な小箱とメッセージを彼に託したのだ。

 

箱にはビールとその仲間の財産に関する重要書類が収められている


仲間が一人も戻らない場合、この手紙の日付から10年間は箱を保管してもらいたい。その10年の間にビールないしビールに委任された人物が箱の返却を求めない場合、錠前を破壊して箱を開けてもらいたい


箱の中にはモリス宛の手紙と暗号化された文書が入っているが、文書は手がかりになるものがなければ解読できない。その手がかりはビールが友人に預けてあり、1832年6月以降に送られてくるはずである

ビール暗号 - Wikipedia

 

この暗号が後の世に何を残すのか。それはここから読み進めてからのお楽しみである。

 

8月28日(水) 世に解き放たれた謎。

 

ビールは謎の箱を託したまま、二度とそこに帰らなかったという。そして彼が「届く」と保証した手紙も、ついぞ届かなかった。

 

ビールが遺した言葉を忠実に守り、オーナーは10年を経てから、その箱を開封した。中には三枚のノートびっしりの暗号が残されていたという。

 

そしてその小箱の中にあるビール自身の説明によれば、それは文字通り、宝の在りかを示したものだというのだ。

 

にわかにフィクションみを帯びてきた話だが、そのワクワクには暗号が相応しいという、その好例だといえる。

 

8月29日(木) 「探せ!」

The Thomas Beale Cipher(トーマスビール暗号) – Nobuyuki Kokai


一個人に宛てられたはずの暗号が、どうして後世に残ったのか。それはホテルのオーナーの相談を受けた、今は名前が歴史上から忘れ去られた、とある人物の恩恵だ。

 

その人物は、オーナーが残りの人生の短さを悟ったタイミングで相談を受けたそうだが、暗号そのものを複製し、冊子にまとめて、出版に至ったという。

 

このまま忘却の彼方にやってしまうくらいなら、暗号を解けるほどの叡智を持った人に、それを授けるのが相応しい。そんな風に思ったのだろうか。

 

恐らく、この時点ではビールもその仲間も、誰一人この世に残っていないだろう。そういう背景もあったのかもしれない。

 

とにかく、この行為こそ、ワンピースの始まりみたいなドラマが動き始めた瞬間なのには間違いない。

 

8月30日(金) ビール暗号とは。

 

ビール暗号は、鍵となる文章がないと解けない代物だった。番号とアルファベットが、特定のそれと対応しているためだ。

 

例えば「163」と書かれていれば、対応する本の163番目に出てくるアルファベットに置き換えろ、という意味である。

 

完全に規則の無い数値の羅列から、何かしらのメッセージを汲み取り、そして解読すること。叡知を終結しても、それは可能なものなのか。

 

ネタバレになるが、暗号は2024年の今現在も未解読のままであり、そもそも逸話さえフィクションなのではと言われる始末だ。

 

僕はまだロマンを見たいのだが、真偽含めて、生きている内にそれは叶うだろうか。

 

8月31日(土) 夢は終わらない。

 

ビール暗号の解読は、次第に世代も範囲も跨ぎ、どんどんと大規模なものへと変化していった。

 

ただ、第二の暗号以外は解読の糸口すら掴めず、またそもそも第二の暗号を破った手段が、他にも通じる保証も無かったのだ。

 

諦めるもの、粘るもの、斜に構えるもの、静観するもの。あらゆる派閥が登場し、その暗号へ巻き込まれていく。

 

それを解いたら莫大な財産が在るというが、それはもはやどうでもよく、中身を知りたいという好奇心が勝っているように僕は感じている。

 

9月1日(日) 狂奔が紡ぐ歴史。

 

ビール暗号があまりにも難攻不落であることから、そもそもがデマである説、国家組織が既に回収した説も流れ始めた。

 

こうなると、賑わいは俄然強くなる。否定派が現れれば、否定派を論破する勢力が現れ、また逆の勢力が盛り返すためだ。

 

現代でいう炎上のような有り様が、1900年かそこらの時代に起きていた。だから今も語り継がれているのだ。

 

そう思うと、何がどうなって歴史に残るかなんて分かるわけ無いのだから、短期的視点の不毛さがまた深く理解できたと感じている。

 

では今週はこの辺で。

 

 

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