導入として、実際に居た気の毒な生徒の話を書いてみる。
その生徒は、『もう学校のワークは全部覚えた!』と豪語して憚らず、実際に問題文をこっちが読んでも、確かに答えを全部当てていたのだ。
―ただ気がかりなのが、それが結果に直結していなかった点である。
定期テストは8割強と奮闘したが、入試レベルになるとズタボロであり、結局5割弱が彼の限界であった。
うぅむ。世知辛い話だ。ただ、こういう『問題集は覚えるまで解きまくれ!』というアドバイスも、その信奉者も、まだまだ勢力としてはとても強い。
この助言はもっともな響きなのだが、実はちょっとした『引っ掛け』があると僕は考えている。
今日はそれについてチクっと指摘しておこう。
『問題集は"○○を"覚えるまで解きまくれ!』
本当に覚えねばならないのは、その問題に対する『解答』ではない。もちろん『解答』を暗記するのが完全に無意味とは言わないが、重要度はそうでもない。
僕が思うに、『問題集』において覚えねばならないのは、その『解説』だ。
答えは正直、数回繰り返せば誰でも覚える。だが、そうして覚えた『答え』に価値はあまりない。
理由は簡単。問題集に書かれた通りに入試で訊かれることは、まずあり得ないからだ。だからこそ、先に紹介した生徒は壊滅したと僕は考えている。
つまり、勉強ができる人の言う『問題集を覚えろ!』とは、『何を聞かれても解ける』ではなく、『説明できる』という意味だと考えて差し支えない。
プロセスまで完全に吸収して初めて、その『問題集』を制したと言えるのだ。そして、その状態で頭に入れた知識でないと、入試では点にならない。
念を押すが、『問題を読む』→『解く』だけだと、頭が硬直化し、応用力はガンガン失われていく。そして何より、勉強が超受け身になり、つまらなくなる。
というわけで、たまには『答え』を見て『問題』を言うみたいな、逆方向の勉強も取り入れさせ、この辺を防げるよう目を光らせないとイカンなと考えている。
『覚えたのに点が取れない・・・』とお嘆きの生徒がもしいるなら、多分それはアウトプットが圧倒的に足りていない。量ではなく種類の話だ。
心当たりのある顔が浮かぶなら、是非ここに書いた話も声掛けの一助にされたし。
それでは今日はこの辺で。