2024年も半分(正確にはそれ以上)が終わった。正直振り返ってじっくり味わう時間と精神的余裕はあまり感じていないのだが、今は無理矢理でもそうしたいところだ。
てことで今日は久しぶりに、「読んで良かった本シリーズ」というのを書いてみようと思う。ただし2024年はそこまで多読してないので、ボリュームは少し乏しいけれど。
そんな備忘録が過ぎる記事、以下本題である。
死にたくなったら筋トレ たった10分の筋トレが君の人生を変える
単にこの人のファンなので、いわばファングッズの意味合いで購入したのだが、単純に読み物としてすごく面白いと思った。ページ数も多く、色々と骨太だ。
「筋肉をつけて生物として上位に立つ」とか、「リアデルトを鍛えてリア充になろう」など、本気なのかネタなのかわからない豪放磊落な思考がそこに書かれている。
ただ、そういうのにくすっと来るのは勿論、どこか背中を押してもらえる温かみもメッセージから僕は感じ取れた。とりあえず筋トレは挫折せずに継続できている。
普段細かいことを考えすぎてヘンに落ち込むことが多い人ほど、器がデカい考え方と発想を知ることで、色々と救いになる部分が多いのではないかと思っている。
仕事の辞め方
やはり僕は、「引き際」をすごく意識してしまう。それもあってか、この本は著者と編集者が好きという理由に加え、単にタイトルだけで買ったところがある。
しかし、仕事はやはり、始めたり続けたりするより、どう引くかの方が圧倒的に難しいことがよくわかる。特に、一度でも輝いた経験がある人ならなおさらだ。
僕はまだ30代だが、40代からソフト老害は始まるという話とか、上の人は思った以上に下の人間の蓋になるという話には、同意だけじゃなくゾッとする気持ちも抱いた。
引退は、いずれ僕も往く道だ。「辞めた自分」を想像したことが無い人は、いい意味で冷や水をぶっかけられて冷静になれるので、オススメの一冊である。
ビジョナリー・カンパニー3 ―衰退の五段階
「ヤバい経済学」でも指摘されていた話だが、かつて偉大な企業と呼ばれた会社であっても、一発のトラブルで倒産にまで崩れることがしばしばある。
その際、予兆のようなものはないのか?最終的に没落に屈する組織が、”押しなべて”やっている共通の出来事や戦略はないのか?それが知りたくて読んだ一冊だ。
傲慢さに始まり、変化を否定し、カリスマ経営者を招聘したかと思えば、劇的な改革といった一発逆転策に縋り、最後は没落に屈する・・。
焦ってダイナミックなことを考えて実行することが、破滅のスイッチになる。そのことを学んでから、僕は調子が悪いときも、どう冷静であるかを強く、考えられている。
大人の発達障害 話し相手の目を3秒以上見つめられない人が読む本
タイトル通りの症状に、僕は心当たりがある。心当たりを通り越して、強い自覚がある。僕は人の目を見れない。そしてこれは、発達障害の症状の1つだという。
発達障害というのを体系的に学んだことが無かったのもあり、手に取ってみた一冊なのだが、こうして背景をじっくり学ぶのは、すごくいい機会になったと感じている。
ちなみに本書の最後には具体的なトレーニングが載せられており、それを毎日実行しているのだが、確かに昔よりかは目を見れるようになってきているように思う。
もちろん、こういう特性は薄まりこそすれ、ゼロにはならない。だから、ぢっと目を見られる人、それこそ川端康成のようなタイプには、僕は絶対になれないのだ。
だがそもそもその水準は別に要らないと割り切っているので、自分のそのケがあって不安な人は、かなり救いになる教えが多いので、手に取ってみてほしい。
仮面の告白
三島由紀夫氏の実質的なデビュー作であり、同時に極めて異色の作品でもある。それゆえか、Amazonの紹介文も、どこかスリリングな熱を帯びていると思う。
女に魅力を感じず、血に塗れた死を憧憬しつつ自らの性的指向に煩悶する少年「私」。
軍靴の響き高まるなか、級友の妹と出会い、愛され、幸福らしきものに酔うが、彼女と唇を重ねたその瞬間「私には凡てがわかった。一刻も早く逃げなければならぬ」――。
少年が到達した驚異の境地とは? 自らを断頭台にかけた、典雅にしてスキャンダラスな性的自伝。
特に前半部分において、男性(特に悲惨な目に遭って流血の果てに死ぬ者)に性的魅力を感じ、特に「匂い」や「腋窩」の描写が多いことから、氏のフェティシズムも伺える。
それをただ雑多に並べただけなら、ただの黒歴史に他ならないのだが、圧倒的な語彙、修辞、表現技法によって、とてつもなく厳かな世界がそこに現れている。
難解ゆえに理解が全く追い付かない部分もそこそこあるのだが、それを差し引いても、何故か悲痛な感覚を持ちながら読み進めることができる。
2024年、現時点では一番面白い小説だと僕は思っている。
―ということで、夏休みの時期は過ぎたけど、遅めの読書感想文、今日はこの辺で。