今回は、一見教育に関係なさそうな読書感想文を書いてみる。それは、『小さなチーム、大きな仕事』という本だ。
『これぞ仕事の本質』という評価も多く、確かに読んでいて目から鱗の情報が盛りだくさんである。
だが、これを読んで有益な情報の多さに興奮する一方、『日本の現行の教育には相容れないなぁ』というもどかしさも感じてしまう。
今日はそういうもやもやも添えて、本の中身について紹介しよう。
仕事の本質とは何か?
この本で提唱されている仕事の本質とは、平たく言えば『みんなが要るものを持続的に作り、世界にささやかな貢献をして、利益を得る!』という感じだ。
そしてそのために、『小さなチームであることは強い武器になる!』という哲学が、具体的なメリットと共に語られていく。
チームが小さいことの最たるメリットは、『身軽である』ことだと感じた。大企業と違い、迂遠な手続きや承認を必要としないため、すぐに行動ができるのがその理由だ。
そして、より行動を早くするコツについても書かれていた。
まず、『閃きの消費期限は短い。だからすぐ、とりあえず形にすること』とあった。小さく生んで、修正しながら大きくしていくのだ。
ただし、必ず自分が何を信念とするかまで考えをめぐらしておき、その真に必要なものは絶対に変えてはならないとも添えられていた。
芯の部分がブレれば、結局はありふれた製品の一つとなり、差別化によって生まれる価値がことごとく消える。そうなれば、大企業に飲まれてそのチームは終わる。
その芯を維持するため、大抵の要望は無視するという一見トンデモな理論が書かれていた。だがそのスタンスは、わかってくれる人に届けばいいというシンプルなものだ。
手広くやるのではなく、突き詰めて考え、素早く商品を生んでは修正する。それにより、徹底して差別化する。
そのためには、『小さなチーム』の方がむしろ戦いやすい!という具合であった。
他にも、『完璧なタイミングはこないから、ある程度で見切って始めちゃう』とか、『小さな決断を重ね、問題を増やさない』といった、有益な教えも多く載っていた。
色々驚きだが、今の世を戦う働き方の心構えとして、非常に理にかなっていると思わされる。
より成果を生むための働き方とは?
続いて、『働き方』について、書いてあったことを紹介する。一番僕に刺さったフレーズは、
『ワーカホリック(仕事依存症)はバカげている』
というものだ。これについては、結構痛快な毒が吐かれていた。
ワーカホリックの状態になると、働くことが目的となり、効率化・技術の進歩といったインセンティブが働かなくなる。
そしてさらに、疲れるからこそ色んなエラーが発生し、さらにその人が仮に管理側となれば、チームが疲弊し悪いムードを蔓延させる、とバッサリあった。
定時に帰るために徹底して無駄を削り、帰ったら自分のことをエンジョイし、たっぷり寝てしっかりと集中力を維持する。
一方会社は、『従業員はガキじゃない』という目線を持ち、出来る限りの裁量を与え、出来る限りやり方に任せる方が良いとも触れられていた。
また、独りの社員が同じプロジェクトで堂々巡りをしていたら、積極介入するともあった。徹底して無駄は許さないスタンスだ。(でなければ先の記述に繋がらない)
―確かに僕自身、実は結構な裁量を頂いて仕事ができているのだが、搾取されていないやりがいは感じるし、結構ワクワクとアイデアを形に出来ている。
僕が自分のチームを持つ日がくれば、絶対に忘れずに実行すべき教えだと感じる。
ファンの作り方。
今の世はSNSの台頭で、ブランドを1から作ることも昔に比べればまだラクになっているらしい。(なかなかそうは思えないが)
その際マーケティングのコツとして紹介されていたのが、まず悪いことは絶対にバレるからこちらから言いふらすというものであった。
非を認め、謝罪し、具体策を述べ、実際に行動する。これは早ければ早いほどいい。禍を転じて福と為すを体現できるチームが強いのだ。(つまりスピードが大事)
それも込みで、とにかく舞台裏を見せた方が良いともいわれていた。ブログやTwitter等を通じ、どんどんこちらの情報をオープンにするのだ。
広める材料が多いほど、強いマーケティングになる。それに、副産物も数多く生まれるので、新たな展開も見えるというのだ。
―このブログの副産物はなかなか浮かばないが、実はこの読書感想文は、自分なりにノートへまとめたものを基に記事にしたためている。
アイデアとして価値があるのかなぁと、思ったり思わなかったり、である。
―では、上記の全てを兼ね備えた人は、優れた生徒なのか?
で、最後にアンチテーゼなお話。多分上記の全てを体現できる学生がいたとして、多分評価され始めるのは『大学から』だ。
それまではよくて『変わり者』ではなかろうか。そして、変わり者でない気質の人が、学校教育を通じてその能力や思考を育むのは難しいと思う。
もちろん、現行のシステムにめげず、信念を持った教師が生徒に常々説き続ければ、いずれその能力に目覚める生徒が出るかもしれない。
―が、それはまず間違いなく少数派だ。(虚しい話だが・・・。)
だからせめて、結構フリーダムにやれる私企業での授業は、こういった『変わり者』が高く評価される雰囲気を維持したいと感じている。(ムズいに違いは無いが)
何故かこういう憂いを、ワクワクする教えと一緒に抱いた次第である。
ま、それを差し引いてもこの激動の時代を生き抜くスキルがてんこ盛りなので、確実に買って損はない一冊だ。是非ともオススメしておく。